2018年3月20日火曜日
ビジネスオーナーの時代
職業の種類は増えているのか減っているのかと問えば、恐らくは増えているのだろう。だが、一つ一つの職業について考えると、労働時間当たりの利益(可処分所得)は減っているのではないかと思う。
その理由は、その職業に価値がなくなってきているからだ。なぜなくなっているのかと言えば、その職業についていない人でもそれなりにできるようになってきている、ということなのだと思う。その技能に関する知識が増え、広まり、道具やコンピュータが便利になってきている。
例えば農業だ。単位面積当たりの収量が増え、味が向上し、天候に左右されないような作り方が広まれば、誰もがそれを作ろうとし、ノウハウの価値は下がる。マクドナルドやディズニーリゾートの接客マニュアルが漏れてしまえば、その高度な接客術は街の喫茶店でも手に入ってしまう。このこと自体は避けられないことだ。
そのような時代、人々が目指すべきは「ビジネスオーナー」になることではないか。つまり、機能としてはAIやロボットが「できる」としても、具体的にその土地でどの商売(機能)を働かせるかを判断し、投資し、それらの機能を「買って」、実際にそのビジネスを行う、という存在だ。例えばタクシー運転手になるのではなく、ロボットタクシーのオーナーになるのだ。
酪農家の例で言えば、牛の体調管理、繁殖、死亡時の後片付け、非常時(病気の蔓延や地震家事など)の対処、飼料の購買手続きまでロボットでできるようになって、更には電気代水道代の支払い、納税までが自動になり、オーナーが地球の裏側で一年中バカンスをしていても問題ない、となれば、人は遊んで暮らせることになる。
今のところ、これに近いことができるのは、株の自動取引のような、全てオンラインで完結するものだけだ。だが、例えば家事代行サービスのような「酪農代行サービス」があって、そこに発注するだけでよいのであれば、似たようなことはできるだろう。そこが人手でやろうがロボットでやろうが関係ない、という世界だ。
更に、酪農においても個々のサービスを分解して、別の専門会社に発注するということもありうる。健康管理はA社、搾乳と回収販売はB社、掃除やメンテナンスはC社、などだ。各々はロボットを使うだろうから、自分でやるより安くなるかもしれない。
自分は一切働かないで済むのなら、利益率が低くても問題ない。数を増やせばよいからだ。投資は借金で行い、その返済も利益率計算に組み込めばよい。初期投資が不安なら、フランチャイズやパッケージビジネスという手がある。それを専門にする会社も出てくるだろう。場所の限定も受けないから、世界中あちこちで薄く広く利益を掠め取るようなことも可能なはずだ。
殆どの人が働かずサービスも安価に受けられる時代というのは、世の中の殆どの人が実業ではなくビジネスオーナーである時代、なのかもしれない。
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