2016年12月14日水曜日

簡易植物工場


農業の発明は、人類の発展に大きな貢献をしたと言われている。安定して食料が確保できるようになったことが人口爆発を引き起こし、それがまた食料の不足を生み出し、更なる効率化が求められてきた。

人類とは基本的に「足るを知る」者ではないのかもしれない。寒すぎる国と南国にはこの傾向は少なく、寒いが寒すぎない国の人が「足るを知らない」ように映る。足りないことは確かにモチベーションになるから、心理学的にも納得ができることだ。だが今や、「足りない」人たちの足りなさ加減は、かなり南方に進出している。地球全体が「足りない」人たちで埋まってしまいそうだ。

農業の最後から二番目の革命は、完全環境制御型の植物工場だと思う。因みに最後の革命は、遺伝子操作による「究極の農産物」だ。例えば成長が極端に早い、背が低く無駄な茎葉根がない、食べるところだらけの食物などになる。こちらは少し時間が掛かるだろう。

だが、完全制御型植物工場は建屋も高いし、ランニングコストも高い。現状とこの中間にあるのが、センサ技術とビッグデータ解析などで肥料や水遣りなどを最適化する手法だ。今考えているのはそれと完全制御型工場の中間的な植物工場である。

一般に言う植物工場は冷暖房完備、光も完全に遮断して人工光で栽培するが、ここで考えるのはその土地の気候に合わせながらも単位面積当たりの収量を上げる、コストと収量のバランスを目指した工場だ。

栽培は二階建てで行う。ここでのポイントは、上階は陽生、下階は陰生の植物を育てること、上階は水耕などの棚栽培、下階は土耕にすること、また上階の天井は透明、上階の床は半透明にして散光すること。また壁の上下には自動開閉するベンチレーターを付けておく。雨水は溜めておき、必要に応じて散水する。

ビニールハウスよりはしっかりした建物にする必要があるので初期コストは掛かるが、ランニングコストは掛からない。上階・下階各々にセンサを入れて、最適な植物及び最適な肥料水遣りなどを行うが、気象制御は行わない。強風を避けるのと、囲いがあるので温室効果が期待できる程度である。

つまりは、基本的にはセンサ補助型の平地栽培と同じだが、高さ方向に逃げることで耕地面積を倍加するわけだ。自然光を使い冷暖房もしないので、ランニングコストは掛からない代わり、収量は完全環境制御型にはかなわない。気象変動の影響は受けるが、強風や低温、長雨の影響は抑えられる。また、野生動物の被害からも保護される。

陰生植物で作物というとちょっと思いつきにくいが、植物工場で栽培されるものの多くは陰生であるので参考になる。レタスやミツバなどだ。

センサ型農業のノウハウが確立している必要はあるが、こうすることで①ランニンコストは安く(若干の電気代だけ)、②単位面積当たりの収量は高く、③気象変動による収量の変動が低くなり、④同じ土地で異なる種類の植物が育成できる、⑤人の手間も掛からない(コンピュータの指示に従って最低限の動きをするだけ)、という農業ができる。

農業というと、放置可能だが収益は低く大面積が必要な穀物類(米麦とうもろこし)と、手間が掛かるが狭い土地でもでき高収益な温室系野菜果物(いちごトマトなど)に二極化しているが、ここにその中間的なものが入ってくると、農業を志す人も増えて、全体的にも豊かになれるのではないかと思う。


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