2016年12月11日日曜日

ネットワークの知性


未だに、人工知能の苦手をネタにしては、人間を超えられない、とする御仁はいるが、時間軸はともかくとして、何れはシンギュラリティは訪れるものと思っている。

シナプスの動きは既に数十年前には解明されていて、繰り返しの刺激がある方向に発達することが分かっている。脳神経のミクロの動きに神は宿っていない。60年代のSFには、ここから類推した人工知能が多く登場するが、根本的にはそれは間違っていなかった。多数が繋がること、そこに本質があったわけだ。

こう考えると、ネットワーク自体が知性を持つ、という考え方は、それほど違和感がない。脳神経自体ネットワークだから、一つ一つの細胞(ノード)の物理的距離がどうであろうが、繋がってさえいればよいわけで、そのネットワークはもうできている。そしてこれからも広がり、複雑になっていく。そうすればもっと高度な知性が生まれても不思議ではない。

その「ノード」となるのは、必ずしもサーバだけではなく、IoTやスマホである。個々の目的は存在しているので、本来はその用途に使うのであるが、多数が繋がることによって自然に発生しうる「ネットワーク知性」を同時に持ちうる立場になるわけだ。

もちろん、現状の社会において、そのように発生する知性が起こったり笑ったりするだけでは意味がない(ばかりかむしろ迷惑だ)。また、自然に発生しうるというのは言い過ぎで、やはり目的を持ったアルゴリズムが各ノードに入っていることが必要だ。

それはやはり社会に役立つものでないといけないだろう。ここで考えるのは、経路検索だ。

有名な話では「粘菌コンピュータ」がある。迷路を解くのに粘菌の性質を使うというものだ。これを最適経路と解釈すると、セールスマン巡回問題のような、いわゆるNP完全問題になる。また、遭難者の捜索や、癌細胞にだけピンポイントで投薬する、逃走中の犯人の捜索、大規模災害時の避難経路検索といった検索問題も、同じような使い方ができる。

例えば、普段は環境センサとして使うが、いざというときは災害発生(火事や強風、水没など)を知らせる。またそれを起点として、人間の最適避難経路を一人ひとりカスタマイズしてスマホに表示する。そこまで大げさでなくとも、目的地の異なる複数の車が平均的に最短時間で到着するための経路を、一台一台カスタマイズしてナビする、などだ。

このときの特徴として、中央制御が必要ないことが挙げられる。つまり、誰かが制御せずとも、巨大なネットワーク自体が知性を以って避難を誘導してくれる。ネットワークの何処かがどのように欠けてもそれなりに機能し、イチかゼロか、という状態にはならない。

高層ビル火災のような場合、大量の小型ドローンを飛ばすことで詳しい状況をリアルタイムで把握し、その場で誘導と探索を自発的に役割分担して行うようなことも考えられる。火災現場では電波の状況も悪く、ドローンの故障も多数起こるだろうから、中央制御でなく自律制御が望ましい。

大量のノードが自律制御で動くアルゴリズム、というと、思い浮かぶものが二つある。一つはブロックチェーン、二つ目はBitTorrentだ。どちらも上の命題とは結びつかないものだが、ネットワークを前提として経路検索をするような汎用アルゴリズムと、条件をデジタル化するIoTのAPIを標準化することができれば、上の目的を果たすことはできるのではないか。

道路には、今後も様々なIoTが搭乗するだろう。これに上のアルゴリズムを載せ、普段は交通の最適化に、非常時には避難に、と使えたら、と思う。
 

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