既に持っている技術が仇になって、新しい技術への対応が遅れ、後発に追い抜かれる。これがイノベーションのジレンマだ。近年ではコダックのデジカメ対応の遅れなんてのは有名だ。一時期絶好調だったマイクロソフトもGAFAに抜かれたが、これもクラウドやモバイルへの対応が甘かったのが一因である。
ではそのGAFAがイノベーションのジレンマに陥る危険はあるのだろうか。
- Amazon
- Apple
Appleは、新製品が継続的に出ないとしぼんでいく。Apple Musicのようなクラウドサービスはあまり順調に見えず、個人情報ビジネスを否定しているため、基本は機器の売上に依存している。
Amazonは、そろそろ殿様商売に法的な規制が忍び寄りつつある。それでもAWSは安泰で、直ぐに萎むことはないだろう。Googleも同じだ。しかし、これらが警戒すべきなのは、新しいコンピューティングプラットフォームだろう。
AWSやGoogle Cloudのベースとなっているのは、世界中にある大量のサーバ群だ。これが負の資産に転じたとき、世界はひっくり返る。そのキーとなるのは何かと考えると、二つ考え付いた。①IoT、②オンプレミスコンピューティング、③強力な法による統制、である。最後はまあ良いとして、前二つはなぜそうなるのか。
膨大な計算が今後も必要になるということは、今後も変わりない。問題はそれを誰がするのか、である。今はサーバ集約型だが、これがまたユーザや現地に分散したときに、イノベーションが起こる。分散する理由として考えられるのは二つ。ひとつは分散コンピューティング、もうひとつはセキュリティである。
一つの例がブロックチェーンである。この真の脅威とは、中央のない完全分散コンピューティングである、というところだ。要はサーバが要らないのである。ユーザがどうしても持たなければならないスマホやタブレットの、あるいはセンサなどIoT機器の、ほんの少しの領域をそれに使う。例えばこれで検索機能を作ったとすると、その制御はGoogleにもできないし、業務システムならAWSに頼らなくても良い、ということになるのだ。
あれ、後者は正しいのかな、と気付いた読者は賢い。AWSの利点は、気軽に借り、直ぐに止められる点にもある。しかし世の中のAWSの使い方はポケモンGoのようなものばかりではない。例えば納税管理や住民情報システムなどは、負荷の急変動はないし、求められるセキュリティは高い。可用性(決して止まらない)も重要だ。AWSがフォーナインやシックスナインクラスの可用性を提供するとしても、分散コンピューティングの方が上、ということはあり得ることだ。
また、負荷変動があるとしても、スマートコントラクトでは余剰の計算力を収入に活かせる利点もある。むしろゆとりを持って揃え、そちらで稼ぐということも考えられるわけだ。総額で考えても、SIもUPSや非常用発電機も不要だから、こちらの方が安くなる可能性もある。
もう一つの、オンプレミスコンピューティングも、似たような考え方だ。AWSはAWS Outpostsを、GoogleはGKE On-Premを発表しているが、結局これはKubernetesがあれば下は何でも良いというモデルなので、OpenStack辺りがアプライアンスを設定するかもしれない。そうなれば使い勝手はAWSだし、余剰計算力は貸し出せばよいし、何よりセキュリティが高い。
更には、ある日量子コンピュータが実用化したとして、それがクラウドに乗ったままだと、既存の認証系は全滅になる。AIの急速な発達も、不安要素だろう。これが現実になったとき、これを防ぐにはオンプレミスで入り口を遮断し、とりあえずは乗っ取りを防がなければならないし、対策をするにしても入り口で行うことが検討可能だ。そういった「未知の恐怖への不安」は、オンプレミスへの指向を加速させる。
まあそれでも、いきなり死ぬということはないし、GAFAと言えどもバカではないから対策はするだろう。しかし今のような巨大ではいられなくなる可能性は、まだ考えられる。
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