2016年10月26日水曜日

人工知能裁判

法治国家の本当の意味は、法律を厳密に守る国家という意味ではない。そういうと反論が起きそうだが、その実情は、為政者が勝手なことをできない、ということだ。法律の厳守は確かにその手段の一つだが、恣意的な法律を作ることを阻止できなければ意味は薄い。そしてこれは長期的に見れば必ず起こることだ。

人工知能やビッグデータが発達した現在、法律に代わって人を裁くことができるシステムが考え得る時代にある。それは集団知である。

人を多数招致し、その事件について詳細を説明し、必要に応じて質問を受け付ける。その結果として有罪無罪、有罪ならその重さを決める。それを見て大勢が批評する。それを繰り返すことによって人工知能が学習し、人工知能の判決をまた大衆が批評する。それが定常状態になったら人工知能の判決を有効とする。その後も批評を受けて人工知能は学習を続ける。

この過程が非人間的か、というとそうでもない。裁判官は一つの事件につき数人でチームを組み、このような議論を繰り返すのが普通だ。最初はその際の資料として使用するのも良いし、精度が上がるまでは有識者のみの情報で学習すれば良い。一方で、近年の裁判員制度のそれから考えると、一般人の見解は別系統で学習しておくとよい。そうすることで両者のギャップも分かってくるからだ。その乖離が激しいものは、裁判官側が歩み寄るべきだ。

このシステムが普及すると明文としての法律が不要になるか、と言えばそう簡単ではないのだが、例えば簡易裁判所の前処理で使う、というような導入はあり得ると思う。

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