2024年11月15日金曜日

ダイナミック租税とその指標

今の法律では、税率は一定の計算式で表されるが、そのパラメータは固定である。需要と供給のバランスによって商品の価格を変えるダイナミックプライシングというのがあるが、あれを租税にも適用してはどうかと考えてみた。

納税者の声をベースにして様々な租税や補助金を自動調節して、どこか一箇所に大きな不満が溜まらないようにする。税収が足りなくなれば、それを補填するべく税率が上がる。これがその基本である。問題になりそうなのは、システム的な実現性はもちろんだが、そのパラメータを何処に置くか、そしてどうやって周知するか、だろう。

まず周知方法だが、これは定期的に官報に掲載すると共に、関連システムへパラメータをプッシュするということになるのだろう。ここでプッシュにトラブルがあると大問題なので、かなり前には通知し、当日までに確実に確定する必要があると考えられる。その前提として、関連する全対象が電子化及びオンライン化していることが求められるため、ハードルはかなり高いだろう。トラブルも頻発する。定期的にとはいっても毎日更新などは無理だろう。

問題はパラメータだ。例えば不景気の時に税収を確保しようとすれば税率は上がるが、これは企業や個人にとっては苦しい話なので、不景気を誘発する恐れがある。また、税は多岐に渡っているので、調整税率に対して不満を覚える個人法人は多く出るだろう。どの業界は優遇されているとか苦しい人が救済されていないなどだ。これは本来の目的の逆であり、本末転倒になり得る。

つまり、税を徴収するあらゆる個人法人の税に対する感情をうまく正しく拾い上げないと、この仕組みはかえって混乱と不満を誘発するだけになるのだ。逆に言えば、そこがこのシステム成功の鍵を握っている。

これはアンケートやSNS投稿の感情分析などでは追いつかない。もしそうしてしまうと、声が大きいものが勝つ文化になってしまう。世の中はアピール合戦で更に混乱してしまうだろう。そうではなく、もっと冷静な指標が必要である。

既に存在する経済指標を使うというのは一つの案であるが、そうなるとマクロには見れてもきめ細かい操作は出来ないだろう。また指標の更新頻度は低いので、せっかくのダイナミックさが失われがちだ。

これらから考えられるのは、①個人や法人による操作が不可能であること、②頻繁な更新頻度、③地域毎や業界毎、年齢性別毎などで細かく見ることができる、の視点で経済指標を探し、無ければ新たに作ることだ。

候補としてはGDP、消費者物価指数、貿易収支、失業率、有効求人倍率、歳出のうち義務的経費、国債残高、出生率、婚姻率、年齢人口比率、年金繰り延べ率、等が考えられる。だが、そういう発想を全部取っ払って、ある一つの指標に注目してはどうかと考えている。

それは、個々人の収入(所得ではない)に対する税負担の比率である。つまり、それが何の収入かは関係なく、収入の少ない人の税負担比率は少なく、収入が多い人の税負担は多くあるべきである、という思想の下、税を調節するというものだ。これを噛み砕くと、

  • 平均的な収入レベル別税負担率を算出する。
  • ここからはみ出ている人が多い領域を抽出する。
  • 収入が少なく税負担が多いグループに固有に掛かっている税を減税し、収入が多く税負担が少ないグループに固有に掛かっている税を増税する。

というものになる。

シミュレーションしてみないとわからないが、そういうことがある程度上手くできるのなら、(月イチ更新が無理としても)税率調整の基本的方針として直ぐにでも使える考え方である。

但しこのためには、個人の収入と税負担をできるだけ正確に、また満遍なく大量に収集する必要がある。国民の合意が得られるかどうかは難しいだろう。

2024年11月14日木曜日

実だけ植物

RF1だったと思うが、サラダに使うきゅうりとして、トゲのない(少ない)品種を選ぶだか開発しているだかという話を聞いたことがある。惣菜に使うきゅうりなのだから味を追求するのかと思いきや、トゲとはこれ如何に、と思って調べてみると、トゲがなくなることで雑菌が残りにくくなり、消費期限を伸ばせるのだという。言われてみればこれはアリだ。

以前も、

https://spockshightech.blogspot.com/2018/04/blog-post_13.html

のようなことは考えたことがあるのだが、これを更に突き進めていったらなかなか面白いものが出来るのではないか、と考えた。例えば、

  • 葉や茎が殆どなく、いきなり実が生えるなど、可食部が大部分となる植物。
  • 光を当てる必要なく、栄養供給のみで育つ植物。逆に、光を当てるだけで栄養供給が不要(空気中の窒素を固定する)な植物。
  • 一定の温度で育つ植物。気温の変化を検知して実をつける植物は多いが、それが必要ない。
  • 栄養バランスが完璧な植物。
  • 逆に、特定の栄養分を極端に多く作ってくれる植物。糖分、脂肪分、タンパク質など。
  • 成長速度がとんでもなく速い植物。
  • 二酸化炭素を物凄く吸収してくれる植物。
  • 育つ方向を電気制御できる植物。
  • 四角く真っ直ぐに育つ木(建材用)。
  • 最初から難燃成分を含んだ木(建材用)。
  • 極端に腐りにくい木(建材用)。

こんな植物が現実にあれば、広い土地がなく日照が悪くても、食料や木材が生産できるようになる。また、植物工場にも対応するだろう。こうなれば、食料や建材、更には燃料や合成樹脂などを、全て工場で調達できる。広大な森林や田畑、果樹園、石油採掘までもが必要なくなるわけだ。これらはもちろん地球温暖化の対応に役立つし、食糧問題や水不足など、あらゆる地球的規模の環境問題の緩和に役立つはずだ。

これを動物に応用するならば、殆どが可食部の牛豚鶏とか、骨のない魚とかが考えられる。ここまでくるとちょっと気持ち悪いが、考えてみれば今の牛豚鶏も品種改良を重ねてきた結果、原種とはかなりかけ離れた生物になっている。それがちょっと早く進化しただけだ。

さて、こんなことが本当に可能なのかどうかだが、時間軸を別にすれば今の農業試験場のやり方(育てて選別して、の繰り返し)で十分に可能だし、遺伝子組換えを併用すればもっとスピードは上げられるだろう。

問題になるのは安全性だろう。ただ、食の安全性というのは多分に安心(感情)の要素も含んでいる。遺伝子組換え植物に警戒心を抱く人も多いが、これには根拠はない。しかし実際、そういうj表記の食品の方が高く売れるのが実態だ。科学的に安全な食物というのは極めて定義が困難だが、これは何とか頑張って証明してほしい。

その一方で、糖分や脂肪分といった要素に抽出してしまえば、あるいは木材なら細胞を不活性化してしまえば、その心配は無くなるはずなので、初期にはそういったものを中心に開発するのが良いだろう。 

2024年11月11日月曜日

メタバースアプリの価格

Meta Questのアプリを見ていると、安いものでも900円辺り、多くのアプリは2千円台である。ゲームアプリなら安いと言えるのかもしれないが、PCやスマホでアプリを使ってきた感覚で言うと、かなり高い印象を受ける。しかも無料のアプリは殆どない。試用できるものも少ない。これでは気軽に試せない。

なぜこうなっているのかと考えてみると、大きくは2つの理由が考えられる。第一は開発コストが高いこと。第二は広告がないことだ。

第一の理由は、従来は画面設計で良かったところ、三次元でワールドを設計しなければならないところが高い理由の一つであると考えられる。多くのアプリはUnityなどのツールで作られていると思われるが、この開発環境は重く、従来のようにプログラミング言語ができるだけでは使い物にならない。絵やデザインのセンスが同時に求められるので、人材はより少なくなるだろう。これは仕方がない。時代が進んでツールが発達することに期待するしかない。

問題は第二の理由である。広告を表示させることで無料化を実現しているアプリは、スマホでは多く見かけられるが、これがメタバースでは全く見当たらないのである。

メタバース内でうまく広告を出す手段がない、あるいはそのためのAPIが整備されていない、というのがその実態なのだろう。確かに立体空間内に従来の広告を表示させるのは難しいだろうし、もし表示させてもそこだけ違和感が生じることは避けられない。スマホと違って画面全部を乗っ取ってしまうわけにはいかないし、中で人が動くのに広告が着いて回るのも変だ。広告を見せる、クリックさせる、クリックしたらどうなる、というメタファが、まだ完成していないのだろう。

Metaはこれを放置しているようにも見える。だがこれではアプリにいちいちカネを落とすことになり、普及を阻むことにもなる。ソーシャルワールド(Meta Horizon World)への誘導策なのかもしれないが、こちらの方にも有用な広告枠は見当たらない(広告はあるが、ただ見せるだけなので表示単価は低いだろう)。Metaは広告についてもっと真剣に考えるべきだと思う。

2024年11月8日金曜日

生成AIを使った教育システムの生成


 座学での教育について理想的なことを言うと、全てがコンピュータで帰結するようなものが想像できる。その概要は以下のようなものだ。

  1. あらかじめ体系は与えられていて、それは全人類共通である。あらゆる学問、趣味や雑学、宗教まで含め、同じEMS(Education Management System)からアクセスできる。但しそれは初期的なもので、個人の学習の進捗や学習コンテンツ自体の進歩によりダイナミックに変化していく。
  2. 学習者は、EMSにログインして、自分がどのような分野でどの程度の知識を持っているかを俯瞰的に把握できる。ここで成績は、学習済みコンテンツの数と、各コンテンツの理解度の相関係数である。
  3. EMSのリコメンドはあるが、基本的に学習者は自分の学習したいコンテンツを選んで学習を開始する。EMSのリコメンドは、前提知識と学習遷移(この学習をした人が次に学習したがる傾向)に拠るが、前提知識は生成AIが自動生成する。
  4. 学習コンテンツは基本的に映像である。再生スピードは0.25倍から4倍まで加速できる。また、学習コンテンツのボリューム目安は標準速で15分程度である。
  5. 映像再生中、学習者は任意の位置で一時停止し、音声ないしはチャットにより質問をすることができる。
    1. 質問に対する回答は、コンテンツから学習した生成AIが回答する。
    2. その回答に対し、学習者は追加で質問をすることができるし、回答に対する評価もすることができる。
    3. どこで質問が出たか、どのような回答をしたか、それがどう評価されたかは、後にコンテンツ制作者がコンテンツの改良の参考にすることができる。
  6. 映像終了後に確認度テストが必要なものは多いと思われるが、それも自動で生成され、また更新も自動でされるため、カンニングはしにくくなっている。
  7. 演習が必要なものも多いと思われる。コンテンツによるが、これも自動で生成されるのが望ましい。例えば発音などは定型でも良いだろうが、計算問題は都度変化させる方がよい。
  8. フィードバックをベースとして、学習コンテンツ(映像)自体も進化する。これも生成AIを利用する。ある程度賢くなったら更新は自動化する。その学習コンテンツも、関連する教科書や論文等を自分で探し、更新し続ける。
  9. ただ学習コンテンツを表示するだけでなく、学習者の表情や学習所要時間などを読み取って、得意不得意や飽きを検知し、適切な対処を行うAIを取り入れる。
  10. 忘却曲線や教育の偏りなど、ある程度分かっている既存の学識を取り込み、個人の学習指向を修正する機能がある。

システムのあちこちに、目的の異なるAIが多数絡んでいるのが特徴であり、極端な話、人間が具体的に作り込むものは無くても良い。逆に言えばAIの精度評価は重要であり、チューニングが狂うとウソを教えることになってしまうため、十分な注意が必要である。

このシステムが完成してしまうと、座学に関しては殆ど何もしなくても良くなる(アドバイスすら不要になる)ため、極端な話をすると教師は不要になる。座学以外でも、軽量のXRゴーグルが開発されれば実技(音楽、図工、体育、社会見学、HR、クラブ活動まで)がAI化出来てしまうため、学校すら不要になってしまう。(同級生は本物の同級生の所作を学習したAIアバターが演じれば良い)

まあそこまでの道のりは遠いのではあるが、実はコンテンツ自体はYoutubeなど世の中に溢れているので、EMS周りが出来てしまえば一気に進化する可能性は秘めているわけだ。そういう発想で研究をして頂けたらありがたい。

2024年11月7日木曜日

生成AIを前提とした開発言語

ChatGPTの勢いがスゴイ。類似のシステムでも、プログラミング言語を吐き出す機能が多数搭載されていて、興味深い。まだ精度は悪いようだが、これが進めば将来は明るいように思う。

さて、これらが吐き出す言語は既存のPython等だが、考えてみればこれは開発者が理解しやすいように作られたものだ。最初からAIを前提として開発する場合、既存言語にこだわる必要はない。ただ、人間が理解し修正できる必要はあるので、読みやすさは必要だ。逆に言えば書きやすさは必要ない。幾らでも自動でAIに書かせれば良いからだ。

となると、最も理解しやすいのは自然言語なのだから、自然言語で出力するというのが自然だろう。自然言語とプログラミング言語の大きな違いは厳密性の表記だが、ここをAIが調整してくれれば、自然言語でも厳密性を損なわずに記述できるようになるのではないか。

では入力は何かと言えば、プロンプトだ。つまりそれも自然言語である。となれば、AIの役割は「曖昧な表現を含む仕様書を、完璧な仕様書に直す」であると解釈される。

例えば、データベースから所望の情報を呼び出すためのSQLの1行を自然言語で書くとしたらどうなるか、と考えてみるとよい。「データベースXXから、XXとXXとXXを抽出する。その条件は、XXがTRUEであり、XXが500以上であり、・・・」と書いたとして、その日本語に複数の解釈が可能であるかどうかをチェックするのがAIの仕事、ということになる。これはまだプログラミング言語寄りなので、「XXを条件とするデータのXXを全てXXに上書きする」と描くだけでSQLが裏で生成されるのが好ましいということになる。更に言えば、「XXであるデータは常にXXであるべきである」と書くと、裏で勝手に情報修正をしてくれるのが望ましい。

つまり、アルゴリズム重視ではなく状態重視である。並列性はむしろ最大で良いだろうし、アルゴリズムがどうであっても最終的な計算結果が合っていれば良いのだ。その途中でACID特性などはAIが勝手に解釈して実行してくれる(べきだ)。

この(論理的に完璧な)日本語には、何らかの規格が付けられるのだろう。構造化日本語V2.0とか、そういうもので仕様書を記述する日は来るのかもしれない。

こうして出来た最終的な仕様書を基に、AIがマシン語に変換し、インストールし、実行してくれることになる。機能は良いとして、こうなると性能はAIコンパイラ(仮称)の良し悪しが効いてくる。前提とするマシンも、単体・クラウド・HPCなど色々あるし、予算に応じて制約が出ることもあるだろう。非機能要件が記述される可能性もある。その調整をAIでやるので、AIの賢さが信頼性やパフォーマンスに大きく影響を与える。各社の腕の見せ所ということになる。こういう競争なら歓迎のはずだ。

2024年11月6日水曜日

自動物流構想

自動運転ロボットが荷物を運ぶ、というサービスは、実証実験では多く登場しているが、本格的なサービスを開始したところはない。その理由は、今の道路や家の構造があまりにも多種多様なため、ロボットが行ける場所は限られているからだ。

これでは自動物流はいつまでも普及しない。ここはで発想を変えて、規定の規格に厳密に従える家(や事務所など)に限ってサービスを提供する代わり、格段に安くなる、という仕掛けを考えてはどうかと思う。

もちろんラスト1マイル、ラスト数十メートルのバリエーションはできるだけ用意するが、ある程度切り捨てることもする。例えば専用の宅配ボックスを置くことは必須とする。その宅配ボックスには電子錠が必須、但しそのための電源供給はロボットから可能。また公共道路からそこに辿り着くまでの段差を制限する。座標取得を容易にする900MHz帯RFIDマーカーを内蔵する。運べる荷物は50Lサイズ、20kgまで、とする。そして実際にサービス可能かどうかは、サービスプロバイダが審査する。荷物自体も専用の段ボールにする。サイズ固定、QRコード付きだ。

この片側が、Amazonのような通販業者や、倉庫業であるとすると、ある程度大きな建物であれば一様に得である。中規模マンション(数十世帯)なら宅配荷物など毎日届くだろうし、工場であれば何十何百と届くから、その省力化の効果は絶大だ。

問題になるのは、業者毎にその規格が違っていると目も当てられないということだが、そこは物流業界でしっかり話し合って、共通規格を作ってもらいたい。EUには既にそれらしき規格があるようなので、それを流用すれば済む。日本でもさっさと進めてほしいものだ。

2024年11月5日火曜日

電子カレンダー

シャープが出しているカラー電子ペーパーディスプレイがある。

https://smj.jp.sharp/bs/eposter/lineup/epc131.html

これは低消費電力で、書き換えが頻繁になければ電池で駆動できる。また、Bluetoothでスマホと接続し、書き換えができる。今回の提案は、これをベースに、特定機能のあるアプリを追加するだけのものだ。その機能とは、カレンダーだ。

まあ要するに、電子カレンダーである。通常のカレンダーと異なり、電子カレンダーのメリットは活かして表示は多少工夫する。以下、仕様案を提示する。

  1. 縦で使用する。
  2. 通常のカレンダーと異なり、先週、今週、来週、再来週…と並んでいる。つまり今週は常に2行目に来る。また今週の列だけは太く、表示面積が多くなっている。本日の枠は強調表示になる。
  3. 同じ表記内で月がまたがるため、月毎に背景の色が異なるようにする。
  4. Googleカレンダーのスケジュールが表示される。スケジュールが多い場合でも、字を縮小してあるいは行幅を増やして、全て表示される。
  5. 深夜0時に書き換わる他、スケジュールに変更があったら書き換わる。

たったこれだけである。これで10万円というとバカバカしく感じるかもしれないが、金持ち向けなら問題なかろう。他、

  1. 月曜始まりと日曜始まりが選択できる。
  2. 土用や六曜、星座等が好みで表示される。
  3. 上部に液晶式の電波時計が付けられる。
  4. Googleだけでなく他のスケジュールも反映できる。
  5. 上部に景色などの写真を表示する。あるいは背景として表示する。

などがあっても良いだろう。

通常のカレンダーに対するメリットは、もちろんオンラインのスケジュールを反映できる点である。スケジュールを登録しておけば、カレンダーがどこに何枚あろうとも自動で反映されるから、間違えることはない。

これは、例えば自分と家族のスケジュールをバラバラに管理しているときにも役に立つ。カレンダーを見れば、予定がバッティングしていることが分かるので、修正することができる。誕生日や記念日などを見逃す心配もないし、人によってはゴミ出しや推しのスケジュールなど、外部のオンラインスケジュールを取り込んでみることも出来るだろう。

2024年11月4日月曜日

インテリジェントフォトフレーム


卓上カレンダーのようなものを机に置いておいて、必要に応じてテレビ電話やフォトフレーム、緊急通報など、家で必要とされる様々な機能を集約する機械を考えてみる。

これは、従来は電話やFAXのような位置づけだったものだ。これら以外にも一家に一台の情報機器は考えられるので、それを切り替えて使えるようにするものだ。

こういうものと最短距離にあるのはタブレットだ。Google Pixel TabletAmazon Echo ShowLeChienTQタブレットなどに近いものと考えられる。だが前二者は汎用性が高すぎ、後者二者は機能が少なすぎる。またどちらにも不足している機能がある。

欲しいものは、以下のようなものだ。

  1. 充電台付きのタブレットであること。また、充電台から外してもスタンドが着いていて自立すること。バッテリ性能は6時間程度は欲しい。
  2. 普段はフォトフレーム、時計、カレンダー、天気予報、スケジューラが表示されている。
  3. インターホン室内機として使える。
  4. 緊急地震速報などの非常時通報の受信端末になる。
  5. ホームセキュリティのモニタになる。
  6. ホームオートメーションのモニタになる。
  7. 電話(インターネット電話だけで良い)、テレビ電話(ZoomやTeamsなど)が使える。

これだけ見ると、全部Google Pixel Tabletで出来る気がするだろう。だが、これらで大切なのは、「自由にカスタマイズできるから個人で工夫してくれ」ではなくて、「お仕着せのデフォルトを用意しています」である。まあ内部的にはプログラムを作れば良いだけなのだが、それは素人にも分かるように徹底的に優しくなくてはならない。

例えば、インターホンを専用のものと取り替えるだけで繋がるようにするとか、ホームセキュリティのセンサのQRコードを撮影するだけで接続するとか、スマホのアドレス帳から連絡先を転送できるとか、そういった細かい使い勝手にこだわるのである。そのデザインには一貫性を持たせ、人間工学や色彩などの知識を総動員して、使いやすさを追求する。

つまりはデフォルトの設計が命なのだ。ランチャーとウィジェットだけで済みそうにも見えるが、各アプリの操作性までを考えるとそうもいかない。アプリの開発元は揃え、UIも統一しなければならない。またOS汎用の操作は隠す必要がある。

例えば、大部分の操作は音声だけで完結できるようになってほしい。起動キーワードも機械のニックネーム(アレクサのような)をカスタマイズして設定できるようになっていてほしい。文脈は理解してほしい。表記の揺れも解釈してほしい。つまり固定キーワードをメニュー化するのではなく、生成AIがフロントに立ってほしい。その生成AIは各アプリを全て操作できるようになってほしい。

例えば「アラームを止めて」「ストップ」「うるさい」何れでもアラームを止めて欲しいし、「はい」「わかったよ」「OK」「良きに計らえ」何れでもYesと解釈してほしい。

どうもそこにこだわったアプリが出てこないのがモドカシイのだ。こういうことはAppleが得意ではないのだろうか。あまり期待せずに待っている。

2024年11月1日金曜日

Apple Vision Proの大き過ぎる弱点

 


欠点、と言いたかったのだが、あえて弱点と言わせてもらおう。

Apple Vision Proが出た時、Metaシンパは二番煎じだと笑い、Appleマニアは相変わらず無批判で褒め称えた。そして案の定、売れていない。

まあそうだろう。品質はいいらしいが、とても値段相応とは思わないし、値段の絶対値としても高すぎる。これは大方の評価だろう。

Apple Vision Proの角解像度は34PPDと推測されている。Meta Quest3は25PPDで、確かに解像度は良い。しかし視力1.0の角解像度は60PPDだそうだから、Appleでも全然足りていない。また視野角はApple Vision Proで90°、Meta Quest3で110°なので、こちらでは負けている。視野角を狭めれば角解像度は上げられるから、これは選択の問題であり、先の優位性も霞んでしまう。

だが、Apple Vision Proの最大の弱点は、そのコンセプトである「空間コンピューティング」である。これを掲げてしまったばっかりに、AppleはVRを捨てたと言っても過言ではなくなっている。

Meta Quest3で空間コンピューティングができないわけではない。Appleに比べて重視していないとは言えるが、それもApple Vision Proの登場で強化されつつあり、その差はほとんどない。一方でApple Vision Proはメタバースに入れない。入らないのではなく、入れない。

いいや、入れる、といいたいApple信者もいるだろうが、少し考えてほしいことがある。Apple Vision Proはそのコンセプトに基づき、コントローラを採用しなかった。これがメタバースには致命的なのだ。

Meta Questでは、メタバース内の移動にジョイスティックを使う。左が移動、右が向きを変えるのがデフォルトだ。これで空間内を自由に歩き回ることができる。一方Apple Vision Proはどうだろう。コントローラがないということはジョイスティックもないということだ。だから空間を動き回るのにジェスチャーで対応しなければならない。まあ不可能ではないが、きわめて使い勝手は悪く、ゲームなども含め使い物にはならないだろう。そして現に、Apple Vision Proのアプリには、その手の(メタバース内を縦横無尽に動き回る)アプリは全く見当たらない。業を煮やしたサードパーティがコントローラーを出したが、純正は未だに動きがない。

この手の動作が必要なのはアドベンチャーゲームだけだろう、と高をくくっていると足元をすくわれる。今後、メタバース内に街ができて、そこを歩き回って楽しんだり用事を進めたりする、つまり日常で実用でメタバースを使う時代は遠からず来る。今のネットスーパーのUIは醜悪だが、メタバース内の仮想スーパーで売り場を歩き回り、買い物カートを押しながら買っていくという形のほうが分かりやすいし、役所の何とか課のURLを探すよりは、受付に尋ねて、右手奥に見える③番窓口だ、と言ってもらうほうが自然だろう。こうなると、「歩く」という行為ができないのは極めて不利だ。

いやジャンプだジェスチャーだといくら言ったところで、使い勝手で圧倒的に劣るのでは意味がない。Apple Vision Proは、ゴーグル型デバイスの魅力の半分を捨てたとも言っても過言ではない。

遠い将来の理想を掲げるのも良いが、今の時点でコントローラを捨てる決断は早過ぎたのではないか。

2024年10月31日木曜日

フレキシブルシティ構想

 


少子高齢化への対応として、行政コストを大きく減らすために有効なのがコンパクトシティである。街の範囲を限定してそこの行政サービスを充実させ、そこ以外の行政サービスを低下させるものだ。

インフラや警察消防など、行政が用意するインフラの保守コストは、サービス範囲に人が少ないほど割高になる。過疎化・少子高齢化で人口が減少し、更に生産年齢人口比率が落ちてくれば、納税による歳入も減るので、インフラの維持コストが深刻になってくる。これを防ぐのが目的である。

だが、知る限りでは成功したコンパクトシティはごく少数だ。コンパクトシティを作っても、そこに移り住んでくれる人が少ないからだ。

日本には居住地自由の原則があり、これは憲法で保証されていると解釈されている。このため強制的に移住させることはできない。また、日本では土地は所有できるが、国や自治体は原則として買い取ってくれない。だからコンパクトシティ化で価値が落ちた周辺の過疎地域に家を持つ人は、なかなかその家が売れない。また、過疎地の行政サービスを大きく低下させることは、日本流の「大きな政府」との相性が悪く、なかなか思い切ったことができない。

また、引っ越し自体が大仕事である。端的に言えば間取りが違うから、全てを持っていって納まるかどうかが分からないからだ。同じ平米であってもレイアウトが違えば家具が入らないとか、梁が邪魔だとか、細かい問題は出てくるものだ。一つ一つ全く違う間取りから間取りへ移動する必要、エレベーターがない、細い階段など特殊な家が多数ある実態、そういうものが自動化や単純化を阻み、値段を釣り上げる。

人がもっと気軽に引っ越しできるようでないと、コンパクトシティはうまくいかない。そしてコンパクトシティ内とて事情は同じで、その中でもフットワーク軽く引っ越しできないと、やはりコンパクトシティ内で同じことが起きてしまう。

例えば、小学校の近くに家を買ったと喜んでいても、子供は成長して何れは中学高校と進学していく。いつまでも小学校の近くに住んでいてもメリットはないのだが、家を買ってしまうとなかなか動けない。そして中学校の近くにしか空きがないところに小学生を持つ家族が入居したりする。このお互いは交差しながら通学するのだが、これは移動時間の無駄と言える。

もし簡単に引っ越しができる環境があるのなら、コンパクトシティはもっと効率化するし、過疎地からコンパクトシティへの誘導ももっと進むはずなのだ。そしてこれは個人の家に限らず企業のオフィス、更には行政サービス拠点などでも同じである。

そこで考えるのが、国や自治体が土地や建物を所有し、個人に所有権を認めない代わり、とんでもなく住みやすい「街」を作り出してしまうことだ。これをフレキシブルシティと命名してみる。

フレキシブルシティは、職住学地域、工場農場地域、娯楽施設、それらを結ぶ自動運転車通路、で構成される。その大きな特徴は、職住学地域における規格化された間取りと自動物流である。

職住学地域について説明すると、8x10mの部屋が大量にあり、それが廊下やデッキでつながっている建物が延々と連なっており、その前には200〜400mトラックを有する運動場がやはり連なっている。

8x10mということは80平米だが、これは夫婦+子供二人の住宅としてはやや大きめの贅沢構造だ。また学校の教室としてみると、殆どの学校は7x9mなので、十分に広い。事務所としても、20人程度までの事務所としては十分である。

つまり、人口構成や企業の状況などによって、それらの部屋をフレキシブルに割り当てて使う、というのがそのコンセプトだ。学校の教室、住居、サテライトオフィス、役所の出張所、小規模店舗、飲食店、医療施設、警察、クリーニング店などを、その人口構成に合わせてフレキシブルに適用する。これによって、職住学接近が為される。

同じ8x10mの部屋であれば引っ越しは容易なので、例えば5年に1回大規模なレイアウト見直しをして、それに合わせて一斉に引っ越しをするようなルーチンを作る。こうすることによって、都市は常に最適化された状態になる。

例えば、ある企業が急激に業績を伸ばして従業員を増やしたら、隣の部屋の人に移動してもらってそこに事務所を作る、といったことができる。採算が悪く撤退した企業や店舗があれば間を詰めてもらうこともできるだろう。

部屋は賃貸になるのだが、通常の借地借家法に基づく賃貸では、この引っ越し強制は不可能である。定期借家権でもダメだ。このため、「居住権はあるが場所は貸主(自治体)の指示に従う」という新しい借家権が必要である。

またこの部屋には教育用のプロジェクタが2台設置されている。前後の白板兼スクリーンに投影するもので、これは各家庭や事務所が好きに使って良い。これで大画面投影で遠隔事務所を繋ぐこともできるので、オフィスの大きさが制限されていたとしても、コミュニケーションを良好にすることはできるだろう。

大画面スクリーンと通信が最初から配備されている前提では、打ち合わせにしても教育にしても、遠隔で行うことは容易になる。例えば、複数の教室で教師一人が対応することも可能だし、特別講師を遠隔で招くこともできるだろう。これは家庭でも同じで、遠隔地に住む両親と常に繋いでおくようなことは可能だ。

工場農場勤務や、娯楽施設に行く時には、自動運転車を使う。自動運転車は建屋の3階から発着するので、徒歩の人を妨げることはなく、信号もなく、渋滞も関係ない。自動運転車も所有ではなく、自治体主導のシェアリングである。

家庭と事務室では作りが大きく異なる、という異論はあると思う。ここでは主にキッチン、風呂、トイレの問題となるのだが、これは各部屋に上下水道管及び換気管を2セットづつ事前に配管しておく。教室にはドアが二つあるが、この近辺に配置しておいて、風呂・トイレ・キッチンは移設可能にする。また共用部にもトイレは用意する。なお、キッチンは電気式に統一する。ガス管は配置しない。

この部屋の大きさは一人二人暮らしには広すぎるので、その場合は半分のところに仕切りを設置して二部屋として使用する。

娯楽施設はモール形式にして、店舗の栄枯盛衰もフレキシブルに対応する。但し普段の買い物は、職住学地域の小規模店舗で済ませる。開放感を得られたい場合や大きな店舗での買い物のみが対象である。テナント料の調整によって、大規模店が一方的に有利になることのないようにする。

これらを貫く自動運転車は、人用と物流用の二種類がある。このうち物流用は、各部屋への自動受取に対応していて、一定のサイズ制限の下、完全に自動で荷物を送ることができる。

受け箱はデフォルトでは一部屋毎に二つ(ドア毎に一つ)である。この受け箱に自動倉庫を連結することは可能で、店舗や事務所等ではこれを利用する。冷凍冷蔵は、自動運転車側では対応するが、受け箱では対応しないため、在宅時のみ受取可能である。

また、工場農場地域に物流センターがあり、各建屋の各階には小規模の自動倉庫がある。これらは一時ストックとして機能する。物流センターは、フレキシブルシティ内外の物流の中継地となる。

全世帯・全事務所・全工場・全教室で自動物流が可能という前提により、フレキシブルシティ内では様々なことが自動物流前提で動く。これは大きな特徴である。

まずは買い物。冷蔵・冷凍・常温と分けて箱に詰め、自宅指定で送れば、後は手ぶらで帰れる。ネットスーパーのように時間指定して家で待つ必要はなく、常温が先行して自宅に届き、家族が帰ってきたら冷蔵と冷凍が届く設定になっている。また、ショッピングモールに行って、先に買い物をしてから遊ぶこともできるなど、時間もフレキシブルに使うことができる。

また、自動倉庫はストックとしても機能するので、例えば季節の服などは自宅に置かず、自動倉庫に追い出してやることができる。これで部屋を広く使える。

また引っ越しもこれを活用できる。大型家具以外はまずこれに載せていったん物流倉庫に収め、大型家具のみ手配して、家具配置後また荷物を自動で取り寄せる、といった手順で引っ越しが完了する。この時、通函ではなく家具兼用の箱に入れておけば、箱を積み重ねるだけでよいので更に簡単である。冷蔵冷凍も大丈夫だから、引っ越し日程に合わせて冷蔵庫をカラにする必要もない。

また、頻繁な引っ越しに適した家具もリースないしは販売することが考えられる。キャスター付き、折りたたみ、分解簡単、規定サイズ内、あるいは自動運転車による牽引が可能な家具を作れば、荷造りせずに引っ越しが可能になる。

この物流の仕掛けはゴミ捨てにも応用できるため、ゴミ回収も24時間可能である。但し生ゴミは原則ディスポーザーで対応する。その他の燃えるゴミ燃えないゴミ資源ゴミは、専用の通函で送るようにする。専用通函は匂い漏れのない密閉容器であり、また返還される前に洗浄される。

工場農場でもこれはフル活用される。例えば、部品ストックや半完成品が同じ仕掛けで自動倉庫に取り込むことができるので、自動倉庫を工場の一部として使用できる。

フレキシブルシティを魅力的にする施策は以上の通りだが、これ以外に過疎地の人がフレキシブルシティに移り住む動機として、次のような施策が考えられる。即ち、過疎地の土地を手放してフレキシブルシティに居住する者は、その居住権を相続できるようになると共に、自治体(フレキシブルシティ)が手放す土地を買い取るようにする。自治体はその土地を整理して、工業や農業、あるいは自動倉庫に転用する。

2024年10月30日水曜日

生成AIアレルギー


生成AIを使って作成されたイラストに対する極端な非難が相次いでいる。そのどれもが、ちょっと行き過ぎに思える。例えば、事前にAIであることを知らせているもの、絵を描いている本人が確認し承諾したものまでも非難されている。なぜこんなに過剰な反応をするのだろう。単にノイジーマイノリティの問題だというのは一つの考え方だが、なぜそのマイノリティは過剰にノイジーなのだろう。

大きく考えると、まず第一に、

https://spockshightech.blogspot.com/2024/10/ai_01917150723.html

のところでもちょっと触れたのだが、「作品タダ乗り」への反感が大きい、ということが考えられる。第二に、人間が描いたものだと思ったらAIだったということに裏切りを感じている人もいるようだ。

タダ乗りへの反論は以前にしているので、ここでは後者を考えてみる。そこには二つの可能性がある。一つは、自分が知っている(贔屓にしている)特定の誰か(イラストレーター)の作品に似ているから、その人の作品だと誤解してしまった(誤解しがち)というもの。もう一つは、単純に人間の描いたものだと思っていたらAIだった、というもの。前者は著作権の問題であるが、上のように本人が承諾しているなら問題ない。そうでなければ著作権違反で、この問題ははっきりしている。問題は後者だ。

ここには一つの偏見がある。人間が描いたイラストとAIが描いたイラストではAIの方が価値が低い、というものだ。

確かにAIは、人手で描く何百倍もの速さで一定の品質のものを生み出すことができる。だからといってその絵の価値が低いわけではない。同じ質の絵は同じ質の感動を生み出すものだ。

そうではなく希少価値のことを言っているのなら、確かにその通りだ。AIは大量に高品質のものを生成できるので、絵一枚当たり幾ら、と値段を付けてしまえば、確かにイラストレーターのそれよりは大幅に安くなる。だがそれは工業製品と同じく、大衆化、普及という価値も持っているのだ。我々は毎日、大量生産によって人手では到底作り得ないモノ、あるいは人手では高価で買えないモノを、日常的に使っている。それは間違いなく「恩恵」である。

ハンドメイドにこだわりたい人は高いカネを出して買えば良いが、その人が大量生産品を否定するのは間違っている。イラストに工業的大量生産品は今まで無かったからそういう偏見も生まれるのだろうが、時代は進んでいるのだ。それは認めるべきではないか。

今後の生成AIは、イラストレーターのだれそれに似ている絵も描けるし、誰とも似ていないオリジナルの画風も作れるようになるだろう。そんな中で、従来の意味でのマンガ家やイラストレーターは姿を消していくかもしれない。でもそれは消滅するという意味ではなく、道具としてAIを使いこなす作家が増えてくるという意味だ。これからのマンガ家は、自分の手で絵を描く必要はない。AIに描かせるが、そのタネやプロンプト、AIの学習やカスタマイズで望みの絵を描くのだ。それは十分にオリジナルであり、タダ乗りなどではない。絵としての価値も十分にある。

似たようなことは、既に音楽業界で起きている。ゲームのBGM等では既に、音楽生成AIによる曲が多数蔓延っており、そのことは誰も気にしていない。従来の意味での作曲家編曲家は徐々に減り、一方で音楽生成AIを使いこなす作曲家編曲家が増えていく。その過程で音楽の質は平均的に高くなり、全体量としても増える。それを俯瞰してみれば、音楽業界は発達したと見ることができる。同じことが今イラストで起きているに過ぎない。

今後、静止画のみならず動画までがAIで生成される時代が来る。世に出る殆どの音楽、絵、動画、文学が、生成AIの作になる、という時代までが容易に予想できる。そんな中での生成AIアレルギーは、結局「ラッダイト運動」に過ぎないのではないだろうか。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ラッダイト運動

ラッダイト運動に参加した労働者は、結局職を失った。だが多くの労働者は、時代を見据えて頭を切り替えた。既得権にしがみつくだけの頭の硬い連中は、結局は滅びるしかないのだ。

2024年10月29日火曜日

電脳メガネの普及とメタバース


Metaが発表したOrion。メガネタイプでありながら広視野角と無線接続を実現している点、非常に興味深い。当分製品化の予定はないそうだが、これがあったらMR・ARは飛躍的に使いやすくなる。正に「電脳メガネ」の世界の到来だ。

従来のVRゴーグルと違うのは、普段から掛けていて必要な時にすぐ使える点だろう。こうなるとそのニーズも変わってくる。そういうものを考えてみたい。

  1. 何といってもメッセージや電話・テレビ電話の概念が変わってくるはずだ。つまり、視界の正面で不透明になるテレビ電話は使い勝手が悪いので、視線左ないしは右に避け、また半透明で背景はデフォルトで消してしまうものになる。こちらの映像もカメラはないので全てアバター、つまり相手の映像も最初からアバターだ。つまりアバターがデフォルトになる。
  2. 多対多の会議では、既にMicrosoft Meshが実現しているような形態が進化するのだろう。VR世界にアバターが集まり仮想テーブルを囲むような形式だ。この場合でも完全なVRではなくMRになるので、現実のテーブルをある程度反映するようなものになるだろう。
  3. MRよりはARが主体になる。マンナビはその最たるもので、行き先を指定すると曲がり角で曲がる方向に矢印が出る。また知人と会ったらその情報を引き出し、顧客との相対では顧客感情を常にAIが検知し適切なアドバイスが出る。
  4. コントローラを握ることはあり得ないので、音声操作とジェスチャーが主体になる。Orionでは手首に筋電センサが付いていたが、これもデフォルトになるだろう。常に着けておいて、必要になったら使うのだ。視線追跡もデフォルトになるだろう。
  5. また、ジェスチャーはある程度標準化してもらわないと困る。今のところ汎用のOSと言えるものはMetaのHorizon OSしかないが、ここでの標準は皆準拠して欲しい。Appleのようなゴリ押しは止めて欲しい。
  6. 電脳メガネで出てくる情報は、スマホで言えばアプリよりは通知、ウィジェットに近いものである。ゲームは殆ど無いだろうし、アプリの機能もそれほど多くはないはずだ。
  7. また、天気予報、ニュース、スケジュール、店舗の割引クーポンやポイント、地図やマンナビ、電子書籍といったカテゴリ毎に、表記はある程度取りまとめる必要があると思われる。
  8. 歩いている時にキーボードを使うことはあり得ないが、座っていれば可能性はある。折りたたんでスマホ程度のサイズになるBluetoothキーボードは既に存在しているが、これが広く普及するだろう。またこの時には正面にスクリーンが出ることができる。会議も、座って行う場合には、従来のように正面に4分割画面が出て、というようなUIは可能と考える。
  9. 遠い将来ならともかく、例えばこれが5年後に製品化したとしたら、バッテリの保ちはせいぜい2時間だろう。屋外で長時間使う前提のため、無線給電も不可だ。ということは、バッテリ交換式ないしはポケットに入る急速充電器のようなものは必要だろう。
  10. 電脳メガネで出てくるような仮想ペットや、呼べば現れる仮想執事のようなメタファで、AIエージェントを呼び出すようになるだろう。
  11. 一部のVRアプリでは既に実現しているが、手元にステータスウィンドウとメニューを表すような仕掛けが定着するだろう。
  12. スマホやスマートウォッチを持ち歩く理由がほぼ無くなる。これらは衰退すると考えられる。
  13. 表示に通知が多すぎると鬱陶しいので、メタファによる通知は増えてくるはずだ。これは以前にもhttps://spockshightech.blogspot.com/2017/08/mr.htmlで紹介した。そこには広告もさりげなく入ってくるだろう
  14. 殆どの人が電脳メガネを掛けている時代には、逆に言えば看板や表札、交通標識のようなものは不要になる。全てをMR、ARで表示すれば良いからだ。これらは景観以外にも費用や耐震性の問題があるので、実物は無い方が良い。特に観光地では、余計な広告は排除して景色をじっくり楽しむのに適している。逆に必要なのはWiFiなどの通信機構だろう。
  15. もっと言えば、掛け時計やカレンダー、テレビといったものも不要になる。更には書籍の類も電子化してしまえば良いので不要。チケットのようなものも不要。リモコンの類も不要。ペンやホチキスなどの文具も多くは不要になる。世の中はかなりスッキリする。ただ、これはその周りの職業が無くなることも意味しており、手放しで喜べるものではない。
  16. 子供の装着がどれだけ可能かにも依るのだが、本が電子化されることで教科書・ノート・参考書などを持ち歩く必要が無くなり、タブレットもノートPCも不要になる。持ち歩くべきは雨具や運動着などだけになるため、学校の行き帰りはずいぶん楽になるだろう。ランドセルは衰退するかもしれない。
  17. MRによる教育コンテンツのリッチ化が期待できるため、学問全体で底上げが図れ、特に子供の知的レベルは大きく向上する。人類がより賢くなれる。
  18. メガネにどんな生体認証が付くのかだが、ツルに仕込む指紋認証、虹彩認証、網膜認証が考えられる。となると、メガネを掛けていれば本人認証はできるので、会員証や鍵が無くても自由に出入りできるドアができたり、支払いも契約もメガネで完結するようになるだろう。
  19. お互いがお互いを直ぐに知ることができるため、例えばクルマでスピード違反で捕まって、その場で免許証を見せろとか車検証を見せろとかを言われることは無くなる。もっと言えば捕まるとか止めるとかも不要だ。スピード違反を検知した時点で点数が引かれ、逃げ続ければ免停になり、更に放っておけばどんどん罪が重なっていく。初対面でも秒速で名刺を交わすことが可能だ。受付における用紙記入や会員証の提示なども必要ない。どんどん用件に入っていける。
  20. ウソがつけない点も重要だ。消防署の方から来ました、と言ってもすぐにバレるし、オレオレ詐欺も不可能。それでも犯罪は無くならないだろうが、難しくはなるだろう。
  21. VR前提の世界だと、部屋から一歩も出ずに世界旅行すらできるイメージだが、MR/ARの場合は現実世界が主で、仮想世界は従になる。今まで通り出歩いて、ウインドウショッピングをすることもできるはずだ。ただ、家に帰れば(今のものより更に優れた)VRゴーグルがあるとも考えられる。MR対VRは、どちらか一方が完全に勝つのではなく、使い分けるものになるはずだ。つまり普段は電脳メガネで、家や会社でしっかりやりたい時にはVRゴーグルを掛ける、といったものである。
  22. VRゴーグルと電脳メガネを両方、家族の人数分だけ揃えるのは大変なはずだ。値段にもよるが、多くの人は電脳メガネを優先するだろう。VRは金持ちの趣味、MRは実用、という棲み分けが起きるかもしれない。
  23. 電脳メガネが普及している時代、(視力補正のための)メガネは使い勝手が悪い。必然的にコンタクトレンズの普及度合いが増えると考えられる。眼内レンズも安くなるのではないか。
  24. スマホと比べると電脳メガネはUIとして優れている。電子機器の普及度としては、スマホ超えが期待できるように思う。これは障害者や高齢者の普及度が上がることを意味しており、国民総電子化を目指すことができる。
  25. Orionのフレームには、大量の電子機器が埋め込まれている。Orionはウエリントン型だが、今後もフレームレスタイプは原理的にもあり得ないし、(視力補正のための)メガネのような形のバリエーションはハナから期待できない。これはファッション重視の人には耐え難いはずだ。とすると、誰もが電脳メガネを常に掛けているという世界ではなく、人によって掛け外しをする世界になっていると想像する。となると、気軽に掛け外しができるような機構、例えばメガネチェーンとかウェストバッグのようなものが普及するかもしれない。

さあ、10年後にどれだけ当たっているだろうか。結果が楽しみである。

2024年10月28日月曜日

辛さの国際規格


長いタイムレンジで見ると、世間は段々と辛いもの好きになっているように思える。外食でも惣菜でもそうだが、なんでもないものにも唐辛子や胡椒が過剰に入っていて辛くなってきてきており、一方で元々辛いものは更に辛くなっている。段々と辛くないものを探すのが難しくなってきている、という言い方もできる。

外食や惣菜に限らず、CookDoやカレールー、パスタソースのような調味ソースは世の中に色々と出ているが、そのどれもが辛い。辛いものが苦手な人にとって、それは生きづらいとすら言えるのではないかと思う。

せめて食べる前買う前に辛さが確認できればとも思うのだが、多くの食品には書いていないし、書いてあるものでも商品ごとに基準が異なり、「甘口」と書いてあってもその辛さは違う。メーカーなりの基準はあるのだろうが、消費者に言わせればそれはかなり不親切だ。

洋服のサイズは段々と国際基準に合わせる方向に向かっており、これは良いことだ。食品の辛さについても、せめて国内では統一してほしいし、できれば世界で統一して欲しい。

辛味成分の含有率を調べればすぐ分かる話なのだから、そんなに難しい話ではないはずだ。ただ洋服と違って上限は難しく、一般レベルとマニア界隈を一つの指標にするのは難しいだろう。なので数値を表現するのが良いだろう。

最初の数段階は一般向けと定義する。指数0は辛味成分なし、指数1は乳幼児レベル、指数2は小学生レベル、指数3から7くらいまでが一般レベル、それ以上はマニア向け、などと、分かりやすい基準にしてもらいたい。

そして同じ基準で、外食や惣菜にも表記が欲しい。これで辛いものが苦手な人でも生きやすくなるだろう。

2024年10月25日金曜日

木密地域対策


以前、

https://spockshightech.blogspot.com/2018/11/blog-post_26.html

という投稿をしたことがあるが、耐震補強ではなく移住と再開発をしてはどうか、と考えてみた。

要するに建て替えである。耐震性の弱い木造住宅密集地域(木密地域)の特定の区画を、耐震マンションで置き換える。通常と違うのは、これを公費でやるところだ。住民は丸儲け、但し土地は接収となり、マンションの部屋の権利に置き換わる。

タダで住宅を与えるようなものだ、ケシカラン、とも言い切れない。もしそのマンションに何らかの防災機能を設けるとしたらどうだろう。例えば1階はガレージにして非常時には一時避難場所の指定を受ける、屋上までの階段を外側に作って津波避難タワー兼用にする、並べるように作って防火壁として機能させる、貯水タンクを持って放水に役立てる、備蓄倉庫を設ける、自治会などの集会所を兼用する、防災トイレを設置する、などとすれば、半分公共施設のようなものだ。近所の防災拠点として機能し、実際にも被害を低減でき、死者負傷者数を減らすことができるなら、その価値はあるはずだ。費用を出す意義もあるだろう。

費用対効果が気になるところではある。住居4〜6棟くらいのスペースを、6階建て20室程度のマンションで置き換えたとして、費用はざっと5億円程度。このうち10室を販売すれば、今なら5億円くらいは回収できそうだ。自治体の負担はそれほど無いのではないか。

2024年10月24日木曜日

ポイントアプリを撲滅せよ

 手元のスマホには大量のポイントアプリがインストールされているが、殆ど使っていない。その都度インストールしたかどうかを思い出して、時には忘れていて、アプリを必死で探すが見つからず、検索で見つける羽目になる。

カードをアプリにしたのは店の都合もあるのだろうけど、殆どのアプリには独自機能はほぼ存在しない。ポイントIDのバーコード表示と広告、たまに来店ポイントの付与機能、せいぜいその程度だ。

こういう店舗毎のポイントを細々とインストールするのはもう嫌だ。汎用ポイントアプリを作ってそこに統合して欲しい。それがVポイントとかPontaとかいう汎用ポイントならそれでも良いが、今の店舗毎ポイントは独自にやりたいのだろうから、そういう汎用アプリを一つ作ってやれば良い。要するに最初に店舗情報を入れて登録してしまえば、後はその店舗に入れば自動でその店舗用アプリに変身してくれるモノだ。

店舗はGPSで検出しても良いし、QRコードを読ませても良いし、Bluetoothで検知しても良い。最初の登録も、既に入っている他の店舗が一つでもあれば、転記できるようにしておけばカンタンにできる。この初期登録は、顧客が逃げる要因の一つになっているので、その点でも有利である。

問題は、誰が作り誰が管理するかだ。店舗から少しづつ徴収するのが王道ではあるが、これは店舗側の加入動機を減らす。なのでここは、店舗の利用者に対する広告費を充てると良いだろう。その店舗に入るとその店舗専用アプリに変身するので、ここでその店舗の広告を表示するのである。これは本来の目的なので、受け入れられやすいと思われる。

一番最初の登録だけは手間だが、これは従来のアプリに比べて何も変わらない。インストールして初期設定をすれば、その店舗にはいるのだから店舗情報がプラスされて、そこからその店舗のアプリになる。二店目以降は、ただアプリを開くだけでよい。それでいて店舗毎にポイントが加算されるから、囲い込みの役割も果たせる。誰も損をしない、究極の使用法だと思うのだが。

2024年10月23日水曜日

シンギュラリティと「場」の概念

 


ガートナーが出しているハイプサイクルによると、生成AIはまだ幻滅期の手前にいるらしい。つまり今後大きな幻滅を経て実用域に進んでいくことになる。その幻滅とは、人間なら当たり前にできることでまだ生成AIにできないことが多く分かってくることによる。そしてその幻滅期を乗り越えるのは、そういうことができるようになるか、そういうことを回避することができるようになるか、となる。

今の生成AIにできないこととして、「以前に自分が言ったことを忘れてしまう」というものがある。例えば「XXはできますか?」と聞いて「できます」と答えたのに、「じゃあやって」と言うとできなかったりデタラメを返したりする。また、回答がこういう観点で間違っているから修正して、と言っても、謝りはするが前と全く同じを返してくる、といったことがしばしばある。

これをアーキテクチャで修正するには、言葉の順序のレベルだけでなく、相互の会話のレベルでフィードバックループを構築する必要がある。つまり、生成AI自体を複数置いておいて、会話単位でフィードバックを掛けるのだ。生成AI自体は複数のニューロンのブロック(塊)を相互接続したものだが、その相互接続済みの生成AIをまた複数並べて相互接続する、といったものになる。

さて、シンギュラリティの鍵となるのは、アーキテクチャをAIが自分自身で変更することだ。現在そのアーキテクチャを持っているAIはないが、上位のAIが下位のAIのアーキテクチャを修正するような仕組みは既に出来ている。もう少し方式を工夫すればできそうな気がする。

その工夫とは、脳の機能である「シナプスの伸び」である。脳は、同じ学習が繰り返されるとシナプスが伸びていってショートカットのようなものが出来上がるが、これはつまりニューロン同士の接続そのものが変わるということだ。これに対して、今のAIのニューロンは、接続は固定で、重み付けのみが変わる。

この違いは何かというと、AIのニューロンの場合は、接続がないニューロン同士では絶対に今後繋がることはないので、ショートカットが不可能である。かといって、最初から全部繋いでおいて重み付けだけで対処しようとすると、組み合わせ爆発が起こって実現不可能になる。脳はこの問題を、粘菌のような仕掛けで回避しているのである。組み合わせ爆発を避けつつショートカットを模索するのが、脳の賢い(?)ところという訳だ。

シンギュラリティにおいても、ニューロンの数を増やすのではなく、このような「ショートカット」を構成する仕組みがあれば、同様のことができるのではないかと思う。これができれば、ニューロンとしては単体のフラットなものを作っておいて、進化させることによって前述の「塊」ができ、更に塊同士の経路ができて、勝手に(今までは人が考えていた)構成が出来上がる。

このためには、ニューロンの「(仮想的な)物理的な位置」と、「ショートカットの動機となる回線(の塊)の関連付け」が必要である。

肝になるのは後者である。例えば今のTransformerの個々のモジュールと相互接続は、人間が考えたものだ。これが自然に形成されるようにするには、「ニューロン同士が近いほど相互接続しやすい」「ニューロンが塊を形成したことを感知する」「ニューロンの塊同士の因果関係(どちらかを刺激するともう一方が反応する)を感知する」といった仕掛けを施せば良い。

このための仕掛けとしては、物理学における「場」の概念を取り込むのが良いと考えている。

場とは、例えば重力場、磁場、電場という意味での「場」である。つまり、ニューロンが発火したらそこには「場」が生じ、場の状態自体が俯瞰して見られるのだ。その場の強さの時系列的比較を通じてシナプスを伸ばしてやるようにすれば、上に上げたような計算機的アプローチより簡単に作れるのではないかと思う。

これともう一つ必要な仕掛けは、脳のランダムな「摂動」である。初期のニューロンは、放って置くとどこも反応しないので、最初のフィードバックに時間がかかる。これに対し、脳がある程度勝手に動くような仕掛けを取り入れておくと、フィードバックも速くなるはずだ。

これを説明すると、赤ちゃんは最初、手の動きを目で見て、手の存在を自覚する。そのうち自分の意思で手を動かせることに気づき、次第に思い通りに動かすできるようになっていく。この時、最初の手の動きは摂動である。ある程度ランダムに動いているところを見せて、それを目で自覚し、今度は意思を入れるとより大きく動く、ということが分かれば、そこに回路が形成される。これを繰り返すのである。

このアーキテクチャ、即ち①多次元位置情報を持つニューロン、②ニューロンの発火を物理的位置情報に転換する「場」、③場の情報を基にニューロン同士の接続を促す仕掛け、④以上の動きを活性化するための摂動、これらが備われば、シンギュラリティを起こす新たなAIになるのではないか、と考える。

2024年10月22日火曜日

メタバース内でマトモに本を読む方法


 自分の知る限りでは、VRChatのワールドで青空文庫が読める図書館があったのと、N高の教室メタバースくらいしかマトモな例がないのが、メタバース内で本を読む方法だ。本や書類がメタバース内で苦も無く読めるようになれば、電子書籍も含めて全部メタバース内に落としてしまいたい、とすら思っているのだが、現実はなかなか難しいようだ。

何が難しいのだろうと考えてみると、①UIの問題、②画面の解像度の問題、③権利(著作権など)と互換性、くらいに分けられるのだろうと思う。これを順番に考えてみる。

まずUIの問題だ。Meta Quest 3など、殆どのVRゴーグルは、コントローラを両手に持つ方式だが、これだと握るトリガーが2つしかなく、細かい操作ができない。また、コントローラの位置を把握する精度も不十分で、ジェスチャーでのページめくりのような細かいことはできないので、ポインターとボタンでめくっているのが現状だ。このため、本の途中から開くとか、パラパラめくるとかいう操作ができない。もしやるならそれに専用のジェスチャーなりボタンなりを割り当てる必要があり、それは自然なメタファーではない。

画面の解像度について考えると、Meta Quest 3では、視野角が110°、角解像度(1°当たりの画素数)が25PPDだそうだ。一般人の視野角は180°、また視力1.0に相当するのが55PPDだそうなので、全然足りていない。25PPDを50PPDにするには、単純計算で画素数が4倍必要だが、流石にそれは難しいだろう。さっさとレーザー式にするべきだ。だがレーザー式はまだ研究段階で、市販されているものはたぶん殆ど無い。

権利問題は、例えばAmazonで買った電子書籍をMetaのHorizon Worldsで読めるか、あるいはそれとKoboで買った電子書籍を両方持ち歩けるか、同じ操作で読めるか、というものだ。電子書籍をメタバースに持ち込むこと自体にまた新たな許諾が必要だし、ましてや他社の書籍となれば同じには扱えないだろうというのは、素人でも想像がつく。スマホやタブレットでもAmazonとKoboは別アプリだ。ちょっと大人げないとは思う。

これらの問題は、一気に解決することはない。このため、最終形態としての理想は語るにしても、その中間形態を考える必要がある。例えばコントローラの完全撤廃は今後数年では実現しないだろうから、コントローラ前提にするならUIを統一すべきである。また画像の解像度が上がらないなら本の方を大きくすべきだろう。

権利問題に関しては、複数のVRリーダーを搭載する方向になるだろう。だがもう一つ裏技はあって、Webブラウザで読むようにすれば、ある程度は解決できるはずだ。今でもWebブラウザはあるのだが、本のように手で持ってというレベルにはなく、視界を防ぐ巨大スクリーンになっている。壁の掲示板を読むようなもので、またURLを指定するなど決して使い勝手は良くないが、まあ当面はこれで凌ぐことになるのかもしれない。

2024年10月21日月曜日

メタバースの不満:パスワード

様々なメタバースアプリをインストールしては試しているのだが、大きな不満がある。パスワードの扱いだ。

新しいアプリを入れるごとに新しいIDを作成する必要があることが多いのだが、そこでパスワードを入力するというのが頂けない。VRゴーグルを被っているので、その新たなパスワードがメモできない。あるいはメモしておいてそれを入力しょうと思っても見えないのだ。多くのアプリは新規登録画面でパススルーを使えないし、パスワードマネージャーも無いので、覚えておいて入れるか、鼻の隙間から覗き見するなどをしなければならない。これは酷い。

あらかじめスマホで登録して、VRゴーグルでのログインを連動させるとか、パスキーにしておいて認証を飛ばすような方式にすべきである。また、

また、キーボードは基本的にソフトキーボードになるのだが、これをどうやらアプリ毎に独自に作っているようだ。となると、そのアプリのIDとパスワードならまだ許せるのだが、Googleアカウント連携でログインしたい時、あるいはWebブラウザからAmazonにログインするときなど、そのアプリがキーボードを用意しているので、ここでパスワードを盗まれる可能性がある。

ここはOSで管理して欲しい。というか、OSの管理であることがはっきり分かるようにして欲しい。アプリの中でパスワードを打ちたくない。あるいは前述のパスキーを使うべきである。

2024年10月18日金曜日

DAPPSサーバレスと省電力

 


ここで言うサーバレスとは、Amazon AWS Lambdaのようなファンクションサービスである。つまり、オンラインサービスに関数を登録しておいて、使いたい時に呼び出すというものだ。ここで、その関数はいくら呼び出しても構わない。つまり、サーバ資源の容量を気にする必要はない。故に「サーバレス」という訳だ。(もちろん課金は掛かる。)

このサーバレスをDAPPSの上に載せてやる。当然ながら、実際にファンクションを実行するのはDAPPSを搭載したコンピュータ群だ。各々が別の思惑でサーバレスを使っていれば、使うタイミングはズレるはずだから、俯瞰して見れば計算機資源の平準化ができる。

クラウドサービスと何が違うのかと言えば、いわゆるDAPPSの強みとして、特定のメーカーや国に依存しなくなる点、ゼロ知識で使える点、大規模災害などのアクシデントに強い点が挙げられる。DAPPSでクラウドサービスを構成するというのも考えられなくはないが、そこまで計算機資源を空けておくというのは考えづらい。もしそれがあるなら、どちらかというと計算機資源の提供で儲けようとする輩だろう。それはそれであって良いサービスだが、ここで狙うものとは違う。

さて、単にDAPPSで実現するだけでなく、その実行マシンをある程度制御できたとしたら、面白いことが起きる。

以前Googleが考えていたシステムがあって、それは実行マシンを常に夜の地域で動かすような制御を行うというものだ。つまり、日中にデータセンタを動かすと、需要も多いし放熱も大変だが、地球の裏側で実行すれば計算機資源に余裕が生まれるし、冷却もやりやすくなる、というものだ。

この考えを応用する。DAPPSの仕組みとして、現地時計を基に、夜間に割当優先度を上げてやることで、これは簡単に実現できる。そうすると、これだけで二酸化炭素排出量の削減に貢献できる。

ファンクションというベーシックなサービスに特化すれば、複雑になりがちなDAPPSも作りやすいだろうし、軽量にできるだろう。その上にDBなりミドルなりをファンクションベースで構築してやれば、複雑なシステムもそのうち搭載できるようになるはずだ。

2024年10月17日木曜日

AIと著作権

 


AIの学習に関する著作権の問題は、実は日本が一番先進的だったのだが、欧米の動きを受けて後退している。学習のためにオープンな著作物を使うことに許諾や対価は必要ない、というのが従来の立場だったところ、オプトアウト(許諾制)にして対価も払うべき、という方向に変わりつつある。

個人的には、対価は不要と考えている。つまり文化庁の旧来の見解が正しいと思っている。なので今の動きは残念に思う。なぜかについて、以下に説明しよう。

文化庁の基本的な考え方は、学習段階ではAIはまだ何もしていないのだから不要、というものだった。AIは学習の段階では何も出力していない。もし何か出力したものがあるのなら、更にそれが既存の著作物に似ているなら、当然これは著作権侵害の対象になりうるのだが、何も出していないのに許諾や対価を得る根拠はない。AIの内部に情報は確かに溜まっているが、溜まっている(だろう)から対価が必要という理屈にはならない。そしてもちろん、出力に対してはいちいち著作権侵害の確認は必要であり、場合によっては対価は発生する。自分としてはこの考えに賛成である。

これに対し、米国脚本家組合のようなところが強硬な反対をしていて、米国では学習の段階で対価を発生させる潮流ができている。日本がこれに倣って見解を変えようとしているのだ。また日本でも作家等が同様の見解を出していて、それに同調するという意味もある。

彼らが言うには、AIの学習は「知識知見等へのタダ乗り」だそうなのだが、繰り返すがそれは出力に対して権利行使すべきである。学習の段階で主張するのは根拠がない。

なぜなら、人間の学習だってAIのそれと同じだと考えるからだ。つまり、人は生まれてから今までの間、絶え間なく大量の著作物に接してきた。自分が書いているこの文章はあくまでも自分の考えで書いているが、これだって過去の大量の著作物を学習した結果として出力しているのである。であるなら、彼らは(著作物には触れた)全人類に対して対価を要求すべきではないだろうか。

人間の学習では対価を要求されず、出力でのみ要求されるのに、AIで学習に対価を要求するのは整合性が取れない。これが自分の考え方である。

ただ、これは一方で、DVDレコーダーにあった私的録音録画補償金を彷彿とさせる。つまり、録画行為はそれだけでは著作権侵害とは言えず、しかし個々の録画の著作権侵害をいちいちチェックするのは事実上不可能だから、広く浅く補償金として徴収する、という発想だ。AIは何れ出力をするが、それをいちいちチェックするのは不可能だから、学習したことが確認できた段階で補償金として徴収する方が簡単ではあり、こちらにはそれなりの道理がある。

だから、私的録音録画と同様の「補償金だ」と言うならまだ理屈は通る。だが「タダ乗り」という今の言い方ではとても納得できるものではない。

学習の段階で課金すると、学習自体にコストが生まれる。これは端的に言えば技術の発展を阻害するものだ。研究段階で、つまり世に出ず世間から料金を回収する目処がない状態で課金されてしまうことになるからだ。これだけで日本が世界に遅れる要因になりかねない。

もう流れは止まらないのではあろうが、自分としては学習段階での課金には断固反対である。

2024年10月16日水曜日

メタバースと物理法則

メタバース上の「モノ」、例えば衣服やアクセサリやオブジェ等は、ワールドをまたいで、あるいはメタバースプラットフォームをまたいで使うことはできない。これを解消すべくMetaは協議会のようなものを開いているが、その成果は未だ現れていない。以前も主張してきたが、プラットフォームとワールドという二段階で世界が分断されている現状は、望ましくない。更に言えば、服のような「形だけ、色だけ」のアイテムではなく、ウォレットや契約書、書籍、あるいは電子機器のような「機能性のあるアイテム」には、全く互換性は無いと言って良いのが現状ではないかと思う。

二次元の画面ではなく三次元の空間を扱うメタバースOSは、全面的にUIを乗っ取るべきではない。メタバース空間自体はあくまでもOSが管理し、アイテム類はOSの上で並行して動く複数のミニプログラムとして存在すべきであり、そのミニプログラム同士でもデータのやり取りを(位置ベースで:近づく、触れる)できるようにするのが正しいのではないだろうか。そしてそのUIとAPIを標準化して、開発ツールとして開放するのだ。そうすれば複数のワールドを渡り歩いて使えるようになる。

そして、メタバースにおけるAPIやUIは、現実世界のメタファを引き継ぐべきである。なぜならそこは3D空間であり、現実世界の模倣だからだ。既存のPCのAPIのように、何のメタファもない状態でAPIを作ってしまうと、自由度がありすぎて互換性が無くなってしまう。これに対してネジには物理的規格があるので世界中で通用する。物理の法則は勝手に作れないから、APIとしても自然に大人しくなり、結果として互換性は増すことになるはずだ。

そこで本提案では、その仕様として①物理法則、②電気、③光学、④情報、を規定するものとする。つまり、メタバース上の「モノ」には物性や電気的特性等を付与し、そこを通じて他の「モノ」と連携するのだ。

従来のコンピュータのUIやAPIは自由度がありすぎ、相互接続が困難だったが、物性なら誰でも知っているし法則も少ない。例えば複数の歯車を組み合わせて時計を作るとか、建材を加工して家を建てるといったことが可能になる。電気で言えば、銅線を巻いてモーターを作ったり、電球を作ったりができるようになる。

情報で言えば、近接通信を設定してお互いがウォレットを近づけると操作可能状態になり、送る側が金額を指定して送れば相手のウォレットに送金される、といったことが可能になる。

契約書の作成については、両者が契約書を手に取り、双方が署名を許諾すると、その場で署名済みの契約書が作成され、両者のアイテムボックスにコピーされるようにするのが良いと思われる。また、契約書に紐づくスマートコントラクトが設定できるようにするのが良い。例えばアイテムの販売なら、モノの所有権の移動と対価の支払いがセットになっている必要があるが、これが契約書に書かれていれば、契約の成立と同時にそれらの処理が自動で行われる。

なお、ステータスウィンドウのような投影画像は、モノではないとみなし、空中に浮かんでいて良い。

こういった法則に基づいてアイテムを作れば、メタバース上のアイテムは、素材の組み合わせによって急速にリッチになる。現実の世界でもできていたように、メタバース内でPCの自作とかモデルガンの改造とかも可能になるだろう。ルーブ・ゴールドバーグ・マシンだって夢ではない。

但し、どこまでも現実世界をシミュレートする必要はない。例えばニュートン力学は模倣しても良いが量子力学まで踏み込む必要はないし、摩擦ゼロとか電気抵抗ゼロとかのいわゆる理想状態も想定して良いだろう。物理的な存在の加工精度や誤差もゼロにして良い。そうしないとモノの動きの計算が複雑になってしまう。

2024年10月15日火曜日

マイナンバー時代のオンライン投票


 日本は未だにオンライン投票が(ほとんど)できないが、エストニアのようにほとんどオンライン投票になっている国もある。なぜ日本ではオンライン投票ができないのだろう、と調べてみると、①脅迫・懐柔、代理投票、成り済まし投票などへの懸念、②クラッキングや悪意による投票データの改ざん、③誰に投票したかがバレてしまうプライバシーへの懸念、が主なものらしい。だがこれらは何れも日本固有の問題ではなく、エストニアでも何ら変わらない。つまりその懸念自体は大きな問題ではなくて、そういった懸念への国民感情こそが違いなのだろう。

さて、日本でもマイナンバーカードが普及し、既に8割近い人がマイナンバーカードを所有している。マイナンバーカードないしはスマホによるマイナンバー認証を前提としたオンライン投票は、技術的にはかなり現実味を増してきているのではないかと思う。いやそれでも不正は云々という人もいるだろうが、それ以外の行政手続きが既にマイナンバー認証でオンライン化している現在、投票だけ特別扱いする理由にはならないと考える。プライバシーの問題に関しても、匿名化の技術は幾らでも存在するし、改ざんの問題に至っては電子化というよりは国の信用の問題だろう。

事情のある人は従来通り投票すればよい話であるし、投票所に電子端末を置いておいて、マイナンバーカードだけ持ってくるということも可能だろう。アプリ自体も、WebのURLを示してPWAで動かすか、あるいはAndroidでもiPhoneでもインストールせずに実行できるInstant Appsという機能があるので、投票のホームページや投票会場でQRコードを示せば済む話だ。何も難しいことはない。

選挙活動もネットを中心にするように移行すれば良い。

  1. 選挙カーは禁止とし、街頭演説のみ許すようする。(選挙カーの移動中は無音必須とする)
  2. ポスターもオンラインにする。従来ポスターが貼ってあった場所には、QRコードを設置する。
  3. 各候補に選挙用ホームページを提供する。中身は政見放送と同様、検閲はされる。
  4. 政見放送も、テレビからネットに移してしまう。時間制限も緩める。検閲は引き続き行う。
  5. 電話勧誘は禁止し、メールやSNSによる勧誘を解禁する。但しSMSはダメだ。またオプトアウトは必須とする。
  6. ネットCMも解禁する。もちろん審査制とする。物量作戦は禁止、また他の広告を圧迫する程度を抑制する。
  7. 新聞広告、新聞への折込は、従来同等レベルの制限で継続する。

未来の選挙とまでは行かず、今すぐにでもできることばかりである。そして選挙費用も大幅に削減できる。国民、候補者、政党、何れにも得だ。なぜ進めないのか、まるで分からない。さっさと進めて欲しい。

2024年10月14日月曜日

包摂Webアプリ


 以前提案した包摂タブレットに搭載するべきWebアプリは、従来型のアプリでは足りないだろうとと思っている。その機能とUIについて考えてみる。

その必須機能とは、先ず第一に、タブレットへのタッチや文字入力(ソフトウェアキーボード、手書き入力)だけでなく、音声入力や画像入力(カメラ)でも対応でき、出力も同じく音声や画像でできること、である。また、振動によって盲の人にも対応できるべきであろう。入力もタッチ(モールス符号など)や外部キーボード(盲用キーボードなど)でできるべきだ。要するに、全ての障害者に対応すべきである。

第二に必要なのは、固定したメニューを順番に選んでいくのではなく、ユーザの曖昧な要求から適切な手続きを選択する方式にすべきだ、ということだ。ちょっと分かりにくいと思うので詳細に説明すると、まず従来型のアプリでは、メニューは階層構造になっている。ハンバーガーボタンから第一のメニューを選び、そこから更に細分化していって、といったような手順で、最終的な手続きに進める。そうではなくて、トップメニューでフリーフォーマットで希望を聞くと、それに合致しそうな手続きの候補が選び出され、曖昧な場合は追加質問で絞り込む、という方向にすべきである。

従来型階層構造メニューの欠点は、各階層のどれに属するかが想像しにくい手続きがあることだ。なので階層を間違えるとまた戻らなければならず、階層が複雑であればあるほど望む手続きに辿り着くのが困難になるのだ。また階層化メニューは、健常者にはそれほど抵抗がなくとも、障害者には途端にハードルが高くなる。これも望ましくない。

だから、最終的な手続き画面のみをDB化しておいて、その手続きの属性を記述した上で、AI検索で顧客の要望を分析して導き出すのである。

この機能とUIは、包摂タブレットには必須であるが、一般的なアプリやWebサイトにおいても極めて有用であり、国や自治体に限らず多くの団体に真似してほしいものだ。

2024年10月11日金曜日

コロナ禍の陰謀論と情報教育

 

コロナ禍ではあまり本ブログを更新しなかったが、この間は陰謀論が跋扈した時期でもあった。コロナは存在しない、ワクチンは危険、アビガン買いだめ、マスクは意味がないなど、実に様々な陰謀論が飛び交った。

この手の人は今だに存在しており、体感としてはむしろ増えている。それも、身の危険を感じるほど増えているように思う。ある程度以下であれば笑い飛ばしたり無視したりしていれば良い話なのだが、これを真面目に語っている人がある程度以上増えてくると、それが世論となってしまい、マトモなことを言っている人が逆に疎外されてしまう。さすがにこれは危険である。

一般的に言って、陰謀論の多くは誤りである。だが例えば、月着陸はウソだとかいうものについては、直接的な国民への害はない。これに対し、コロナ関連については人の命に関わるものであり、つまりは陰謀論を信じてしまうと人が死ぬため、明確に害悪である。これに危機感を感じ、私はあちこちで陰謀論者と議論をしてきた。彼らは自分の考えの誤りを認めることは無かったが、沈黙する(反論を止めて去る)ところまではいった。多くは内心では考えを改めてくれたのだろう、と勝手に信じている。

だが、コロナ発生からもう4年も経っているのに、過去に否定済みのものと全く同じ理屈で全く同じ陰謀論を唱える陰謀論者は、後から後から出てくる。これには流石に疲れる。彼らは以前の議論の記録など知らないし、読めと言っても読まないから、また一から同じ議論を進める必要がある。面倒なことこの上ない。

まあ、後から出てくる陰謀論者は言わば新人であり、彼らにとっては新発見なのだろうから仕方がないことなのだが、こちらからすれば同じことの繰り返しであり、気力の継続にも限度がある。これは個人のボランティアではなく、学校教育で何とか対処して欲しい事柄である。

情報の科目がようやく受験科目になった。そこで大学入試センターの「情報I」模擬試験を見てみたのだが、いわゆる情報リテラシーに関する問題は1問も見つからず、がっかりした。プログラミングも統計処理も大事だろうが、情報リテラシーを教える方が遥かに重要ではないだろうか。確証バイアスフィルターバブルエコーチェンバー生存者バイアスチェリーピッキング疑似科学敵対的メディア認知悪魔の証明、統計情報の正しい読み方、論理学の初歩、といったものをしっかり教える方が、人生においては遥かに必要なことだと思うのだ。

プログラミングができたとしても、陰謀論を信じてワクチンを接種せず、その結果としてコロナに感染して命を落とすようでは困る。いや、困るどころの話ではなく、個人的にも国にとっても多大な損失である。そしてその陰謀論がはびこってきたのは、情報過多の時代に合わせて情報リテラシー教育をすべきところを怠ってきた、教育の責任ではないだろうか、と思うのだ。

今からでも遅くはないので、情報の教育の半分は情報リテラシーに充てるべきだ。残りの半分は、従来のものを圧縮して教えれば良い。文科省の皆様には、ぜひ検討して頂きたい。

2024年10月10日木曜日

終日運用を想定したVR環境

 朝起きてから寝るまでの大部分の時間をメタバース空間で過ごすと仮定した際、各家庭にどんな機器を設置すれば良いかを考えてみる。

現在のところ、VRゴーグルの連続稼働時間はせいぜい2時間である。これを16時間程度に伸ばすには、極端な省電力化か、連続的に給電するか、しかない。省電力化の方法として期待されているのはレーザー網膜投影だが、これはまだしばらく時間が掛かりそうだ。よって当面は給電方式になる。

給電には有線と無線があるが、有線だと手を動かした時に引っかかるので、ここでは無線を考える。後述する無限軌道デバイスから給電してやるのが良いだろう。数m級の無線給電の技術は、実験では色々とされているが、まだ実用化(商用化)はされていない。これは汎用を目指すからこうなるので、VRゴーグル専用とすることで認可は取りやすくなるはずだ。

また、VRゴーグル自体の性能ももっと向上させる必要がある。主には解像度と視野角がまだ足りない。これらを増やせば計算能力も必要だが、これは後述するようにVRゴーグルから外出しすることが可能だ。

次に無限軌道である。歩く走るといった運動をするためには無限軌道が必要だ。市販されているものでは、滑りやすい靴を履いて半球状の台の上を歩くというものがあったが、これは足元が不安定だし、地面の形が平面にならないので好ましくない。

ディズニーが実験的な無限軌道を作っているニュースがあったが、あのようなものが良いと考える。また上の(滑る)市販品の直径はせいぜい1mくらいだったが、人間の運動範囲を考えると1.5〜2mくらいは必要だろう。

無限軌道は必ずしもキャタピラである必要はなく、例えば大量のベアリングを並べてモーターで回すとか、表面を超音波モーターにしてやるなど、幾つか考えられる。個人的には超音波モーターに魅力を感じる。

次に体の動きだが、手首足首にトラッキングツールやマーカーを着けて無線で把握するというものは市販されている。また手にコントローラーを持つ前提のものも多いが、これは止めるべきだろう。

無限軌道デバイスがある前提なら、その無限軌道デバイスからカメラで撮影すれば、トラッキングツールやマーカーは不要なのではないか。つまり、無限軌道デバイスの周辺に複数のカメラを埋め込んでおけば良いのではないか。下から見上げることになるが、見下ろすところはVRデバイスのカメラでできるので、下半身の動きを補強することでバランスがとれそうな気がする。

最後だが、椅子やベッド、テーブルの類をどうするかだ。1日中立っているのは疲れるし、事務作業は椅子に座ってキーボードを叩く、ないしはペンで書く、といった作業が必要だろう。

このためには、無限軌道デバイスをベッドぎりぎりに設置しておいて、寝る時にはそこへ移動する、というのが正解だろう。これで寝るのと座るのはできる。椅子の高さや硬さが調整できないが、これは妥協する。

机だけは解決策がないので、いったんゴーグルをMRモードにして、リビングの椅子とテーブルに移動してから改めてVRモードにする、といったことが必要だろう。キーボードやペンもリビングに置いておく。

ここまでのところを整理すると、①無線給電に対応したVRゴーグル、②無線給電と姿勢検知カメラを内蔵した無限軌道デバイス、これらさえ開発できれば、従来のVR体験にも増してかなりの体験ができることになる。②はAC接続だから、CPUを載せてVRゴーグルの計算の一部を肩代わりすることも可能だろう。これはVRゴーグルの軽量化、低消費電力化に貢献するので、一石二鳥である。例えば無線給電だけでなく無線LANも内蔵させてペアリングしておけば、①からはセンサのデータを飛ばし、②からは計算結果としての左右の眼の動画ストリームを流すだけで済むので、①はかなり小さくできるだろう。

これは今の8万円のVRゴーグルだけの体験よりは遥かにリッチになるので、①②セットで30万円くらいでも売れると思う。もちろんコンテンツの充実は前提だが。

2024年10月9日水曜日

国民生活統合保障制度とプライバシー

ベーシックインカムには反対である、と既に述べているが、社会的にはあまり支持されないものだろう。社会主義の匂いを感じる人もいるだろうし、国が制定する設定生活レベルの低位安定も不安になる。

もし「金銭配布で済ませる」という枠組みを維持したまま社会保障の新しい形を考えるとすると、「オプトアウトによる自動的な保障」が良いと考える。つまり、拒否しない限りは有利になる保障は自動で受けることができる、何も考えなくて良い、というものだ。これなら既存の社会保障はそのままで、手続きのところだけ変えれば済むので、現状から大きな逸脱は起こらない。例えばライスステージの各々による支出の変化にもある程度追従できる。(児童手当など)

健康保険証を提示しなくても健康保険が適用され、後期高齢者になれば自動的にルールは入れ替わり、高額医療費も自動で適用される、・・・ というものである。自動でマイナンバーに紐づいた口座に自動振込される。その内訳を見ることはもちろん可能で、マイナポータルにログインすればよい。

年金の受給年齢をフレキシブルにするなどというものについてはデフォルト値を決めるだけでよい。もちろんそのデフォルト値を変えることは可能だし、変更可能な期限やその選択肢の説明なども通知は行く。バーターになるもの(医療費控除とセルフメディケーションなど)は各々資産の上でユーザに有利なものが選択される。生活保護相当より給料が低い場合は、自動的に生活保護相当との差分が支給される。もちろん生活保護自体の捕捉率も100%だ。

従来の社会保障の多くはオプトインだったので、複雑な手続きや期限があり、使い勝手が悪かった。また生活保護相当者の捕捉率は、わざと低く抑えられてきた。こういうものを解消するのだ。

ベーシックインカムと名付けてしまうと、個人の事情に関わらず一律支給というイメージが付いてしまうが、日本人はこれは好まないだろう。従来の「特別扱い」を維持しつつ支給するには、このようにするのが良いと考える。これを仮に「国民生活統合保障制度」と名付けることにする。

このためには、国民の属性を必要なだけ収集する必要がある。つまり、収入があればその全てを、家族がいればその全てを、病気や障害があればその全てを、当然年齢を、国に知られる必要がある。

これはいわゆる名寄せの危険に対する不安を呼び起こすことになるが、各々は、例えば収入は税務署に、家族構成は自治体に、病気や障害は社会保険庁などに、既に知られている。そしてそれらを基にした補助金の類を既に提供されている。なのでそれは「漫然とした不安」なのだが、もしどうしてもというなら全ては自治体(基礎自治体)に提供し、国には提供しないとするのが妥当であろう。また、職員によるプライバシー侵害には強い罰則を設けるのが良いだろう。

プライバシーの懸念を盾にオプトアウトを断るか、国や自治体を信じて楽になる道を選ぶかは国民の意思次第である。

2024年10月8日火曜日

電子契約の保管


 今後電子契約が増えていくと、その電子契約書の保管場所は問題になってくると思われる。というのは、今のコンピュータストレージはけっこう壊れやすいものであり、長期間そのデータを保持するのは意外に困難だからだ。

例えば、Google Driveに入れていれば良いだろう、などと考えているのでいれば甘い。Googleアカウントはある日突然BANされる危険があるし、操作ミスでうっかり消してしまう可能性もある。1年アクセスがないとアカウントが凍結され、更には消滅してしまうかもしれない。自宅のPCなどは更に危険である。ストレージが吹っ飛ぶ事故は日常茶飯事に起きているからだ。

基本的には個人の責任とはいえ、電子契約の保管は、実は紙の書類を保管するよりよほど考えてやらないといけないモノなのだ。

必要なのは以下のようなものだ。

  1. オンラインストレージであること。
  2. IDは国が管理する法的な根拠を持つものであり、作成も消去も行政手続きが必要なものであること。
  3. 無料であること。
  4. アクセス制御や署名手続きのUIを持つこと。
  5. 法的根拠のある書類の保管に限ること。
  6. 一度アップロードしたら容易に消去できないこと。
  7. クラウド側で多重化やバックアップなどを行い、数十年単位で消えないことを保証すること。
  8. 国際的な互換性を持つこと。
  9. プライバシー、セキュリティを十分に保てること。
  10. 最上級のサイバー攻撃耐性を持つこと。

こう考えると、マイナポータルを拡張するのが最適なのだが、どうもこの議論は全然進んでいないようだ。こういうインフラを国が用意してくれないと、電子契約もなかなか進まない。早急に検討してもらいたい。

一方、ブロックチェーンを使うというアイデアもある。DAPPSでストレージを作っているものは幾つかあるので、ここに保存するというものだ。

ただ、現在自分が知っているDAPPSの中では、自分の希望に叶うものはない。その条件とは、

  1. どこまでも無料であること。
  2. オープンソースであること。
  3. 既に稼働しており、ある程度の人数が使っていること。
  4. IDが汎用であること(特定の企業に依存しないものであること)。
などである。大抵のDAPPSストレージは、容量見合いで金銭を要求するものばかりだが、これはダメだ。容量見合いで計算機資源を要求するものであれば理に適う。こういうものが出現してくれれば良いのだが、誰か作ってくれないだろうか。

2024年10月7日月曜日

行政SNS


 電話番号に基づいたSNSを汎用化して規格化し、行政からの通知をこれに統一するアイデアについて述べる。

この目的は、郵送による通知を無くし、全てをデジタルで完結させることにある。もちろん無くすと言ってもそれは個人単位の選択であり、郵送を続けても良い。

メールではなくSNSを使う理由は、SNSは電話番号に紐づいているため、信頼度が高いためである。メールは制限なく幾らでも作り廃止できるが、電話番号は簡単には改廃できない。これは受信先の識別という意味もあるが、送信元の身元を確認するという意味も含まれている。ユーザの下には怪しいところからのSNSも来るので、正しい送信元であることを確認する必要があるのだ。

そこで、あらかじめ信頼できる送信元は自社の電話番号を登録しておいて、そこからの送信である時のみに特別なマークを表示するようにするのが良いだろう。

そのSNSには用事の概要とURLが書いてあって、更にはそのURLはユーザユニークであり、それをクリックすれば必要な手続きが開始できたり情報が読めるようになっている。URLをクリックすることは開封通知として認識される。

行政からの通知の電子化には色々な方法が考えられる。マイナポータルに統合するのは一番簡単だろうが、これにはどうしても国の指示に従わなければならず、小回りが効かない。自治体が思い立ってすぐに動けるこの方式は、所詮過渡期のものではあろうが、当面は極めて有用であろうと考える。

2024年10月5日土曜日

アルミガラス外枠の家

 

次のような建築を考えてみた。話は非常に単純で、

  • ガラスとアルミだけで作った、外枠だけの建物を建てる。
  • その内側に改めて家を建てる。

というものだ。

いったいこれが何になるのかというと、まず外枠をアルミとガラスだけで作ることで、半永久的にノーメンテで環境を整えることができる。どちらも錆びず朽ちない素材だからだ。そのためにも、例えばシリコンシーラントやゴムパッキン、(アルミではない)バネ座金のようなものすら使ってはいけない。あくまでもアルミとガラス、これだけしか絶対に使わないで済むよう、工夫をする。これに伴って、ガラスとガラスの間などに多少の隙間ができるのは許容する。

その中に家を建てるのなら、寒暖差と風雨の大幅な緩和が為されるので、家自体の耐候性が弱くても良いのだ。例えば屋根のシーリングがいい加減でも、あるいはなくても問題ない。殆どの雨は外枠が遮ってくれるからだ。断熱性も弱くていい。家と外枠の間に(あまり動かない)空気があるからだ。つまり、家の作りを簡素化できるのだ。例えば壁がなく殆ど窓の家を作れる。

現代の家は、透湿フィルムや断熱材など複数の層が重なった複雑な構造になっている。これは建築費を上昇させ、解体時の廃棄物の分別を難しくする。これは設計の難易度も上げるし、地球環境にも宜しくない。特に、屋根が大幅に軽くできることは、耐震性の向上にも貢献する。簡単に作れ簡単に壊せる家は、これからは望まれるものだ。

また、家の外壁や屋根は10年ごとに保守が必要だが、アルミガラス外枠の家には必要ない。外枠は水洗いだけで良いし、内側の家の外壁や屋根は風雨にさらされないので、従来よりもずっと長く保つだろう。これらは保守費の低減に貢献する。

家の外壁をアルミ・ガラスで作ってしまえば同じではないか、と思われるかもしれないが、少し違う。今回想定している外枠と家の間の空間は、庭になる。その庭も風雨に晒されないので快適に過ごせる。台風の日でも庭弄りができるし、洗濯物干しもできる。その干渉空間は十分に広く、家の中に匹敵する快適さがある。また、家の外壁をガラスで作ってしまうと、どうしても風雨は完璧に凌ぐ必要があるため、コーキング材は必須になる。このコーキング材の寿命は短く、保守間隔は5年になってしまう。これは一般的な外壁の保守間隔よりもかなり短い。一方本提案では、外枠と割り切ることでコーキング材を省略し、保守間隔を数十年単位に伸ばすことができる。

ガラス壁のメンテナンスは、美観を維持するという意味では面倒である。しかし近年ではロボット掃除機が発達しており、むしろこういった割り切った外壁のほうがロボットを使いやすいだろう。

2024年10月4日金曜日

メタバース前提の社会はどう変わるか

 

メタバースが主流の社会では、外出の機会が極端に少なくなる。これによって、大きなダメージを受ける業界が出てくる。それは大雑把に観光業と交通・運輸業、飲食業である。観光にはゲームセンターや映画館、大型ショッピングモール、スポーツ関係なども含まれる。また、雨具の需要も減るだろう。こういう業種は、メタバース内での類似の仕事に業種転換することを強いられるだろう。例えばメタバース内に観光施設を作り、入場料を取るなどだ。

それでも外出が必要となる機会としては、①対面が必須の業務、②本物の運動、③医者に掛かること、④メタバースに飽きて本物に触れたくなる、くらいだろうか。

①としては、介護業務や医者・看護師、デリバリーや宅配業者などが考えられる。また②に対応するコーチや④に対応する観光業者なども考えられる。③については、殆ど家の中にいれば感染症に掛かる心配はない一方、運動不足、日照不足、食事の偏りは懸念される。医者に掛かる回数が増えるか減るかは微妙なところである。

一方で、宅配やデリバリーは今以上に発達する。これに対応すべく、宅配に適した構造は進化するだろう。それは端的には宅配ロッカーの進化だ。ロボットカーによる自動配送に対応した宅配ロッカー、冷蔵や冷凍に対応した宅配ロッカー、また階段を登れるロボットカーなどによって、ドアToドアでロボットで完結するデリバリーも出てくるかもしれない。

次に、メタバースの性質からくる細かい問題について議論する。

メタバース内ではアバターを使う。アバターの自由度は現実のファッションの比ではないため、街を歩くアバターの奇抜さには慣れが必要だろう。またビジネスコードも新たなものが必要になる。背広にネクタイ七三分けはもう古いが、獣人や無用にセクシーなアバターはやはりビジネスには相応しくない。どのへんがセーフ、どのへんがアウト、というのは徐々に合意を積み重ねていく必要があるだろう。

また、メタバース内ではワープ(ワールドへのジャンプ)が可能なため、場合によってはプライバシー侵害になったり驚かせてしまったりする懸念がある。ワープ/ジャンプのマナーについても議論がされることになるだろう。これはワールドに「入口」を作っておいて、そこにしかジャンプしないようにする、というのが落とし所になるだろう。また、誰でも入れるのではなく、ある程度の制限が類型化されると思われる。誰でもOK、連絡先に登録している人はOK、リクエスト可能にする、指定した人だけOK、チケットの発行、入館料を取る、家族だけOK、誰もNG、などだ。

メタバース内では、通勤や通学など、移動の時間は殆ど必要ない。このため、従来より自由時間は増える。それを全て労働や勉強に振ってしまうのは勿体ないし、健康にも悪い。このため、国レベルで時間の使い方には制限を掛けて欲しい。今の労働基準法のようなものを拡大して、労働メタバース(勉強メタバース)、睡眠、食事・トイレ等、自由時間の上限下限を制定し、自動で監視する。副業してもサービス残業をしても全てバレる。また勉強も、同じ勉強時間での比較をするようにすれば、受験地獄には陥らない。これもメタバースだからこそできることである。

次に、メタバースでの体験が現実の体験より優れているところについて考えてみる。

メタバース内での全ての人の行動は、メタバース空間提供業者が完璧に把握することができる。またその人のIDを厳密に管理することで、そのIDが誰かも即時に分かる。このことから容易に想像できることは、メタバース内での犯罪やイジメ、それに準ずるトラブルは、現実世界に比べて大いに減るだろうということだ。

例えば、現実の世界で旅行をすると、ホテルや飛行機の都合で日程が制限されたり、予約が一杯で希望するところに行けない、旅行会社がミスをして、あるいは雲隠れして旅行ができない、現地でスリや強盗に遭う、接客がなっていない、混雑していて満足に見れない、暑い寒いなど、様々なトラブルが待ち受けている。下手をすれば病気になったり怪我をしたり、命を落とす危険すらある。

これらの問題は全て、メタバースの世界では起こりにくいし、モノによっては起こり得ない。どんなに人気のスポットでも交通手段が予約でいっぱいになることはないし、病気や怪我をする心配もない。トラブルが起きれば直ちに相手を切って、次に進むことができる。

これは旅行に限らず普段の生活でも同様である。迷惑行為をするご近所さん、タバコのポイ捨て、学校でのイジメやネグレクト、そういったものはメタバースでは起こらない(ようにすることができる)。問題が起きれば証跡を辿れば直ちに分かるから、訴えれば即事実が確認され、対応できるからだ。100%バレる犯罪をする人などいないし、もしいても確実に修正される。その意味で、メタバースは現実世界より安全である。

また、メタバース上には資源問題も食糧問題もないため、メタバース上での戦争や国際紛争は起こりにくい。起きるとすれば宗教や思想信条の対立だが、メタバース上で武力行使をするのは基本的に不可能である。自分のワールドやアバターを他人が破壊することは、そもそも許されていないからだ。もしそれが起きるとすれば、現実の社会において国がメタバース業者に圧力を掛けることだろうが、これはもう現実社会の問題であって、メタバースはそのとばっちりを受けているに過ぎない。一方で言論は大いにやってもらって構わない。

メタバースでは、距離の概念が希薄になるだけでなく、言語も自動翻訳が掛けられるため、言語上の障壁も少なくなる。これによって国際交流は現実世界よりもずっと簡単になる。これは相互理解を深め、ひいては国際紛争を減らすことに繋がる。戦争の最も大きな動機は、お互いの無理解だからだ。

メタバースでは、学習効果が高くなる。紙の教科書に比べてタブレットによる電子教科書のほうが学習効率が高い、ということは既に証明されているが、これがメタバースになれば更に立体的な視覚効果が使えるので、学習効果が更に上がることは間違いないと考える。これは学校の勉強だけでなく、社会のあらゆる学習場面で効いてくる。このため社会の進歩の速度は一層進むと考えられる。

逆にメタバースのデメリットを考えてみると、匂いや味はほぼ伝わらない。観光旅行で現地の食事を食べることができないというのは、人によっては致命的だ。もちろん通販と組み合わせて疑似体験することはできるのだが、自分で調理や解凍などをする必要があるのは興ざめである。またメタバースは視覚を主に使っているため、盲の人には殆どメリットがないと思われる。

運動不足になりがちというのもデメリットだろう。例えば短距離走をメタバースで行うのは無理がある。砲丸投げやり投げ、テニス野球、鉄棒鞍馬吊り輪新体操など、メタバースでは困難な競技はごまんとある。

これらより、人がメタバースに留まる時間について、公共の視点から何らかの制限が掛かる可能性はあるだろう。例えば週休二日としてその二日は運動や外出を勧められる、等だ。

2024年10月3日木曜日

サイコパスの増加に関する仮説

 

石丸某とか斎藤某とかの言動を見ていると、どうも人間の通常の思考回路から離脱しているような屁理屈を、方便としてではなく本気で信じているかのように見えるところがある。巷の分析ではサイコパスの疑いが濃厚だそうだ。こういう人が立て続けに出てきたことには、象徴的な意味があるのではないかと思う。

まず、サイコパスという言葉は正式な医学用語ではない。では医学的にはどう言うかというと、「反社会性パーソナリティ障害」というのだそうだ。略してASPDという。

https://ja.wikipedia.org/wiki/反社会性パーソナリティ障害

これをざっくり言うと、通常と著しく異なる発想や行動を取る(パーソナリティ障害)もののうち、その発想や行動に反社会性があるもの、ということになる。そしてパーソナリティ障害には他にも「依存性」「強迫性」「不安性」「瞑想性」など多数あり、特定の一つだけでなく多数が重なっていることもある。

サイコパスの場合、自分を守るあるいは自分の欲求を満たすためなら倫理や法律を無視しても構わない、という根本がまずあって、ここから嘘をつく、他人を騙す、そのごまかし方、屁理屈のこね方が上手い、更に他人の(主に心の)痛みに対する共感力が無い、といった特徴がある。だから相手がいくら傷ついても自分は平気、傷つけることを厭わない。

この「嘘」だが、事実を捻じ曲げるという方向もあるが、屁理屈とも言う通り、論理を捻じ曲げるのも彼らの得意である。一見正しそうだが実は間違っている論理というのは世の中に多数あるが、サイコパスはこれを(知った上でかどうかは分からないが)巧みに使いこなす。

事実の捻じ曲げ方のテクニックとしては、「多数ある情報のうち、自分に都合の良いものだけつまみ食いする」いわゆるチェリーピッキング

https://ja.wikipedia.org/wiki/チェリー・ピッキング

行為がよく使われる。斎藤某の場合は、議会満場一致で不信任になったのに、「辞めないでください」という高校生の一通の手紙を頼りにまた選挙に出ようとしている、といったことが挙げられる。前長野県知事の田中康夫氏は、斎藤某と同じく議会で不信任を受けた後に選挙で知事に返り咲いたが、このケースは田中氏が「議会には嫌われているが民衆には好かれている」という事実を見据えたものだった。今回の斎藤氏は民衆にも明らかに嫌われているので、冷静に考えれば落選は確実と判断すべきところ、そういった量的な分析ができていない。

チェリーピッキングと似た行為として、恣意的な論理展開がある。「論理展開における前提条件についてのチェリーピッキング」を行い、自分に都合の良い論理だけ主張する、というようなものが代表的だ。

人が会話をするとき、あるいは議論をするときでさえ、論理的に完璧な因果関係というのはなかなかない。その背後にある条件が変われば因果関係は弱まるし、逆転することすらあり得る。だから議論をするときにはその前提条件に常に注意する必要があるのだが、それを意図的に無視すれば自分の都合の良い論理展開ができる。

石丸某が職員と議論している動画で、石丸氏との会話より先約があった別の人との会話を優先させたことに対して職員を問い詰める、というものがあった。ここで石丸氏が駆使した手法がこれである。優先順位の付け方における原則とその前提条件の扱いを、意図的に捻じ曲げたものだ。

より上位の上長との会話を優先させるのは部下としては当然だが、それは先約がない場合の話である。この時は先約があったので、その先約と上位上長たる石丸氏のどちらを優先すべきかについて職員は石丸氏に尋ね、石丸氏が「いいですよ」と言ったので先約を優先した。しかし彼はそのことを後からなじったのである。前述の映像では、上位上長との会話を優先すべきという原則論のみを展開し、職員が「いいですよって言いましたよね」と何回も言っているのに、それを無視して原則のみを言い続けていた。当然会話は成り立たない。

大局的に見れば、ツマラナイ押し問答を繰り返して時間を浪費するよりも、さっさとしたかった会話をすべきだ。だが彼は、自分が後回しにされたことが気に食わなかったので、屁理屈をつけて職員を非難することでスッキリしたかったのだろう。目的が個人レベルの粗末なことであり、それを達成しても市民の役には立たない。時間の無駄であるし、今後の職員の心象は悪くなって結局自分に不利になる。当然、彼自身も含め、誰のためにもならない。公人しかも首長としての仕事の優先順位の付け方として根本的に誤りである。

ちなみに、この2つのテクニックは陰謀論でもよく使われるので、知っておくと役に立つだろう。

さて、私は最初に「象徴的な意味がある」と言った。

https://spockshightech.blogspot.com/2017/09/blog-post_17.html

https://spockshightech.blogspot.com/2019/05/blog-post_8.html

https://spockshightech.blogspot.com/2017/01/blog-post_8.html

このような投稿を過去にしているのだが、そのどれもが「ストレスの増加」を原因として、その結果として「不寛容」「右傾化」などが起きているのだが、「サイコパスの増加」もこの一つとして数えられるのではないだろうか。つまり、幼少期に強いストレスがあって、彼らはそのストレスへの自己防衛としてサイコパスになったのではないか、と思うわけだ。

サイコパスの特徴である「自己中心的」「共感力がない」というのは、別の視点から見れば精神的な自己防衛とも考えらえる。だから、ストレスが大きい社会ではそういう人が増えるというのは因果関係として納得できる。

彼らは、その強いストレスのお陰で自分に対する自信を失っており、相手との協調協力は始めから行うつもりがない。支配か服従かしか選択肢がないと思っているのだ。そしてもちろん服従するつもりはなく、支配する側に回ろうとする。それが自我を保つための全てなので、そのためには何でも許されると思っているのだ。

右傾化も不寛容も同様で、やはり心理的な視点からは自己防衛と言える。それらと同列なのではないか。つまり、強いストレス社会において、ある人は不寛容に、ある人はサイコパスになり、あるいは右傾化する。陰謀論者も同列だろう。そしてその数が多くなれば、首長にもそういう人が目立ってくる、というわけだ。

世の中が不寛容社会になり右翼やサイコパスが世間に増えてくれば、それを(優しく)咎める人も減る。教育の効果も落ちるだろう。そういうものが負のスパイラルを描いているのではないだろうか。

この仮説が正しいかどうかを検証する必要があるかどうかは分からないが、ストレスが低い社会を目指すというのは、この仮説に限らず現代社会が進むべき方向性だろうと思う。

とここまで調べたところで、改めてサイコパスの環境依存性について調べてみたところ、サイコパスには遺伝的要因が大きいということが分かった。ガックリである。

2024年10月2日水曜日

メタバース警察

 

メタバース内でも犯罪は起こり得る。既に問題になっているのは、メタバース内での集団レイプ事件だ。アバターだからといって精神的被害がない訳ではない。実際に発生した事件では、現実の警察で捜査が行われている。

現実の警察が動くことがあるとしても、メタバース上で犯罪が起きてから実際に行動するまでは長く時間が掛かり、多くの証拠は失われてしまうだろう。だがメタバースは全てコンピュータ上で動いているので、犯罪が起こればシステム側がその証拠を確実に抑えることは可能である。例えば誰のアバターがどこにいてどんな行動をしたかは、証跡を取れば分かる。だからメタバース上の犯罪捜査や抑止は、メタバース空間提供業者の中で専門の組織を組んで、これに当たるべきである。

この組織は常時メタバース上に待機しており、ユーザの「110番」(通報)を受ければ秒速で現地に飛び、被害者と加害者を各々別の隔離された空間に飛ばす。そして各々事情聴取すると共に証跡を取り、裏付けを確認する。そしてそのレベルに応じて注意、ID停止、ID剥奪、警察への通報等を行い、被害者には裁判に必要な証拠を提供する。マスコミへの公表等も行う。

通報を受けずとも、犯罪発生率の高いところは巡回したり、犯罪のパターンを調べておいて証跡から自動警告するような仕掛けも作ってほしい。逃れようのない証跡が常に残るので、犯罪の抑止は現実よりずっと簡単なはずだ。

このためにも、IDは公的な身分証明書と対応させ、ブラックリストも作っておくべきだろう。ID作成時の契約条項にも、当然これらは書いておく必要がある。

2024年10月1日火曜日

全てAIが対応します


星新一のショートショートで、今でも覚えているものがある。全ての人の肩には鳥が留まっていて、その人が本音を言うと、鳥が当たり障りのない言い方に変換して相手に伝えてくれる、というものだ。今、生成AIがメールの下書きをしてくれているのを見ると、正にこれだな、という感がある。

肩に鳥というのは寓話であるが、これがアバターならもはや完璧だ。人がメタバース上で交流するようになれば、この鳥は完全に隠れた存在となり、もはや相手には鳥がいることが分からない。言葉もそうだが、態度も表情も全て、AIが一枚噛んだ状態で接するしかないことになる。

メタバース上のコミュニケーションでは、この問題が付いて回る。相手が実はAIだった、というものも含めて、相手の本当の人格が分からず、自分の人格も他人には分からない。メタバース上で友人になったり恋人になったりしても、それが本当の相手とは限らないわけだ。

今の時代、メタバース上でカップルになった人はそこそこいるらしいが、それは容姿のみしか隠していない。将来上記のようなAIが実用化した時、言葉も態度も全て隠した状態で相手を好きになったとしても、それは本当のことなのかどうか。これは社会問題になるだろう。

その先には、「生身の人間が一人づつ殺されてAI人格に置き換わっていく」といったSFも書けるだろうし、「生身の人間との相対は全てAI人格になり、人格を磨かずとも人は幸せになれる」という籠の鳥状態の人間が多く出てくることも予想される。そういう世界では人同士が生身で会う機会が極端に減り、これは人口減に直結するが、社会はAI人格で回るのでそれが問題にならない。そして本物の人口はどんどん減っていき、人類は穏やかなる滅亡を迎える、というシナリオを書くことも可能だ。

上のシナリオで、人類が穏やかに滅亡するとしても、その個人個人は全く不幸ではない。むしろ世界の誰でも理想的な生き方、死に方ができて、幸せこの上ないはずだ。戦争も起きないし、動物の絶滅もないし、地球環境は維持できる。人類以外にとっても、それは理想ではないだろうか。

それは人類にとって、マクロで見ると防ぐべきなのかもしれないが、ミクロで見ればその幸せを取り上げることになる。大衆は賛成してくれるだろうか。滅亡を他人事として自分が幸せなら良い、という人が大部分ではないだろうか。事実をAIに隠されることも含め、これらは真面目に考えるべき問題である。

2024年9月30日月曜日

AIは人の仕事を奪うか

 


間違いなく奪う、というのが私の考えだ。

たまに、これに反論がある。曰く、AIで仕事が無くなっても、別の新しい仕事が生まれる。だが、この論理には量的視点が欠けている。

まず第一に、無くなる仕事と増える仕事、仕事の数はともかくとして、それに従事する人の数は同じだろうか、ということだ。例えば今、中国では、アニメーターやイラストレーターといった絵を描く人の需要がAIに取って替わられ、大量の失業者が出ている。この人たちを救う新たな仕事として考えられるのは、AIを使って絵を描くオペレーターであろうが、イラストレーターよりオペレーターの方が数が少なくて済むのは自明である。イラストレーターがイラスト一つ描く間に、オペレーターは百枚描くことができるのだ。

また、絵を描く需要そのものが増えるから他で雇ってもらえるだろう、とも考えられるが、その需要とはアニメーターではなくオペレーターだ。どちらもできる人材なら対応できるが、そうではない人材の数の方が圧倒的に多いだろう。また当然、その需要が百倍か(オペレーターの生産効率を上回る需要が起きるか)という問題もある。つまりここでも数合わせはできないのだ。

次に、その新しい仕事の大部分は、元の仕事より遥かに難しいものないしは異質なものであるということである。上でもアニメーターとオペレーターの問題があったが、ではアニメーターがオペレーターになればいいじゃない、とは単純にはいかないよ、勉強が必要だよ、脱落者も出るはずだろ、ということだ。そして底辺の、そして数の多い失業者の大部分は、その脱落者になる。つまり、その人がどんなに再教育を受けても、幾つ技能を身につけても、その結果としてできる仕事はどれもAI未満、そういう人がこれからどんどん出てくるだろうということだ。

労働意欲がいくらあっても、その人ができる仕事は全てAIがやった方が安い。これでは雇ってくれない。経営者は人ではなく機械を導入する。世の中で仕事が幾ら増えても、その人達に仕事は回ってこないのだ。

そして、求人がないから仕事ができない、というのは、失業保険の対象にはなるが、生活保護の対象にはならない。なので失業保険が切れた後は、公的支援が何も無くなってしまう。

今の国の制度は、この事実を無視している。大量失業+公的支援なし状態を避けるためには、政策が必要だ。早急に対応すべきである。

その対応策としては、大きくは二つ考えられる。一つ目は、ビル・ゲイツ氏が提案しているようなロボット税(ないしはAI税)だ。人を雇う代わりにロボットやAIを使う企業に対して税金を掛け、人を雇う方が金銭的に有利になる状況を作り出す、というものだ。但しこれは線引が難しい。どこからが課税対象なのかは恣意的に決める必要があり、企業の納得感は低いものになるだろう。

もう一つは、生活保護の対象を拡大することだ。つまり「持てる能力の全てがAI以下であるために求人がない」という人を対象にする、というものだ。こちらは多分に屈辱的だし、やはり線引は極めて難しいだろう。

つまりどちらも難しいのだが、第三の方法が見つかるまでは、これらを無理やりでも通さなければ、大量の餓死ないしは暴動などが起きる。さっさと考えるべきだ。

2024年9月29日日曜日

もっと透明化



見てみると実にシンプル、なぜ今まで出てこなかったのか不思議なくらいだが、まあ出てきた以上は大いに活用してもらおう。自動車のピラーは大きな用途ではあるが、他にも色々考えられそうだ。さあ、何を隠そうか。

まず思い付いたのは、家の柱だ。マンションの角部屋などで、その角にある柱を透明化する。同じく、窓ガラスの枠も隠す。すると、今まで以上に広々とした空間が演出できるのではないだろうか。極端な話、360℃柱がない、ガラス張りのように見える空間を作ることができるわけだ。

2024年9月27日金曜日

災害復興ドローン部隊


 能登地震では、狭い陸路が多数寸断されたために、人や物資の流路が確保できず、多くの人が取り残されている。こういったところにいち早く物資を届けるための基本設備として考えられるのは、ドローン主体の部隊であろうと考える。ドローンなら、道路や鉄道がどうなっていようが先に進めるからである。この構想について検討してみる。

まず目的だが、本格的な国・自治体の復興作業が開始される前、事象発生から数日程度から道路復旧前、期間としては数週間程度の、被災者の生活物資(水食糧等)の確保とする。道路が復旧すればドローンによる搬送は不要であり、むしろ邪魔になるので撤収する。病人怪我人救出に関しては、資材の搬入は行うがそれ以上は関与しない。

基本的には自律で行動する。但し当然、警察消防自治体等の邪魔をしないため、それらとの情報連携は行い、要請についても受け付ける。

次にその概要である。2m四方程度の物流ドローン発着場と簡易倉庫のセットを、1~10㎞程度の間隔でネットワーク上に配置する。ここを拠点として、各ネットワーク間をピストン輸送するドローンを設置する。むろん拠点やドローン群は自前の通信網を構築するものとする。
また、安全で交通が遮断されていない陸地ないしは海洋上の船舶に本部を設置し、そこを物流搬入搬出の窓口とする。

このネットワークの構築には、ブートストラップが必要である。つまり、まずは偵察ドローンを送り、人がいる場所を見つけ出して、そこに資材を送り込んで拠点の構築を行う、ということを繰り返して構築していく。また当然、自前で発電が必要であるが、太陽電池では追いつかないため、発動機と燃料が必要である。

何を輸送するべきかを人間がいちいち把握していては大変なので、ある程度自動で行う必要がある。倉庫からの取り出しも含め、それを殆ど自動化する物流システムがこのシステムの鍵である。例えば長時間物流が途絶えていたところほど優先すべきだし、拠点の燃料不足があってはならないし、リクエストもある程度受け付けるべきである。

廃棄物の回収も行う。指定サイズの箱に入れておけば良いようにする。これらの実現のためには、物資の輸送状況や拠点の増減状況等をリアルタイム把握する必要がある。

機材一式をコンテナに詰めて保管しておき、また搬送する物資も規格化した箱に詰めておいて、全国に配置しておく。そして非常時には全国からそれを輸送して展開するようにすれば、それが地震だろうが火山噴火であろうが大規模人災であろうが、柔軟に対応できるだろう。

2024年9月26日木曜日

ベーシックサービスとベーシックサブシディ

一時期流行したベーシックインカムもいったん廃れたが、完全に潰れた訳ではなく、一部の市民や政治家は諦めていない。また何度も復活するだろう。そしてまた萎むだろう。

世間がベーシックインカムに反対する理由は主に財源と配分であろう。MMT信者のおバカ提案は論外だが、そうではない真面目な提案においても財源の問題は厳しく、素人が期待するようなものには絶対になり得ないことは明らかだ。

ベーシックインカムの定義が曖昧で、賛成をしている殆どの人は、自分に都合の良い解釈をしている。今ある他の社会保障は全部そのままで、更にベーシックインカムが増えるなどというあり得ない幻想を持っている人も多い。だからそもそも単純に「ベーシックインカムに賛成、反対」などとは言えないハズなのだ。「誰それの定義によるベーシックインカムに賛成、反対」であるべきだ。

さて自分は、ベーシックインカムの根本である「カネによる解決」に反対なので、全てのベーシックインカムに反対である。カネをばらまくのではなく、必要なサービスを無償化する方向に使うべきだと思う。つまり、例えば医療費をばらまくのではなく、診療費を無料にするのだ。なぜか。

生活保護でもそうだが、カネのばらまきでは、ばらまく側は当然その用途を想定する。食費に幾ら、衣服に幾ら、…というものだ。しかしいったんばらまかれてしまえば用途を問うことはできないので、実際には食事ではなく酒やギャンブルに使ってしまうかもしれない。それを止めようとして越権行為をする自治体は後を絶たない。

だが、フードチケットを配れば、それは食事にしか使えない。想定した通りの用途に使ってくれるのだ。フードチケットを売り飛ばしてギャンブルに行こうとするのは止められないが、そもそも買う人もフードチケットは持っている。そして人が一人で食べられる量はそんなに変わらない。だからもし不正があったとしても、大規模にはなり得ない。

カネをばらまくのではなくサービスを無償化することを、ベーシックサービスと言う。上の医療や食料(フードチケット)の他には、住居や高齢者施設の提供などがある。

例えば生活保護は、地域によって支給額が若干異なる。このため、支給額の高い地域に住んでいる人が安い地域に行ってカネを使えば、儲かってしまう。しかしベーシックサービスならその心配はない。どこに行っても無償なら、わざわざ遠くに行く必要はない。

また、ベーシックサービスがある場合、例えば医療に関して言うと、保険外医療のような問題はあるが、原則として保険に入る必要はない。これは健康保険、後期高齢者医療制度、民間の医療保険、傷害保険、全てが不要ということを意味している。いざという時のための余分なプール分が不要になり、保険会社の利ざやも不要になる。トータルで考えれば、これは国民の無駄を省くことになっている。

ホームレスの問題もそうだ。住居が無償なら、ホームレスの数は激減するはずだ。家を与えられ、食べ物もタダなら、公園で寝泊まりして凍死する危険もないし、食料店のゴミを漁る必要もないし、不良に絡まれて怪我をする心配もない。

そして、ベーシックサービス化に伴う税の負担増について、企業はそのまま給料減として対応して良い。無償化の分安くなるだけであれば文句も少ないだろう。

ベーシックサービスの具体化だが、医療、介護、義務教育、住居、衣食の5つは完全無償とする。但し医療に標準治療、義務教育には公立学校があるように、残りの3つについても標準のレベルを設定して、それ以上の差額は自己負担にする。

もちろん、普通に稼げる人は、差額を払って更に良い生活をすることができる。そしてそういう人の割合が適切になるように、ベーシックサービスの「標準の程度」を調節すれば、ベーシックインカムでよく心配されるような「労働意欲の低下」もないだろう。

そして、そういったサービスを提供する業者に対して負担金を支払う仕掛けが、ベーシックサブシディだ。国ないしは自治体が直接業者に経費を払うわけだが、ここにこそ不正の芽があるわけで、提供するサービスの質とサブシディの額が釣り合っているかどうかはしっかり見なければならない。

ベーシックサブシディのメリットはここにもあり、もしベーシックインカムの用途を確認しようと思ったら1億人のチェックが必要だが、ベーシックサブシディなら数百万で済む。またサブシディを受けるのは個人ではなく業者なので、フォーマットの整備なども個人より厳しく指導できる。不合格ならサブシディから外れるだけで、それは国民を取りこぼすのとは違うからだ。なのでコンピュータ化もしやすいだろう。

2024年9月25日水曜日

海上淡水製造装置


海上の空気は何もせずとも高湿度である。この単純な事実を使って、淡水製造を試みる。

話は簡単で、その海上の空気を集めて凝結させるだけだ。凝結には、いったん海中に空気を引き込むことで、海の水で冷却をするというのが良いかと思われる。つまり、海上に給気口を設置して、そこから海中にいったん入って、また海面に出てくるようなパイプを作り、海面から出た口のところで空気を吸引するのだ。それは給気口から湿気を帯びた空気を取り込み、海中の冷熱と吸引による陰圧によって凝結し、パイプの一番低いところに溜まる。これを回収してやれば良い。

 ポンプの駆動は海上に浮かべた太陽電池で行うのが良いだろう。太陽電池は通常濃い色をしているため、海水を温め、水蒸気の発生を促す効果がある。他、波で発電するなどバリエーションは考えられる。

この装置の特徴は、構造が単純なことだ。故障も少ないし、大量生産にも向く。また、海でなくとも湖でも良い。この場合は淡水化ではなく浄水として働く。元の水さえあれば何でも良いのだ。

問題は生産コストで、これは計算してみないと分からない。

2024年9月24日火曜日

汎用分散ID


国民IDや、それに近いIDは、各国が既に多数出している。日本ではマイナンバーがこれに当たる。しかしそういうIDを出していない国もある。例えばイギリス、オーストラリア等がそうだ。こういう国はプライバシーに関する意識が高く、国が用意するIDに乗ることを良しとしない。しかしそういう国でも各々のサービス用のIDは存在し、Googleアカウント等の汎用IDと連動させることはできる。

こういった汎用のIDとして、GoogleやApple、Yahoo!等のアカウントが使われているのが現状であるが、企業依存というのは倒産危機や政府の介入といった不安がある。OpenIDという規格もあるが、これはID連携の話であってオリジナルのIDはどこかに必要である。

このため、企業に依存しない分散IDが最低一つ必要である。このIDにOpenIDで連携させるようにすればよい。

分散IDとは、分散IDアプリをインストールしたスマホ等がネットワークで相互接続して計算機資源を確保することで、中央集権的なサーバを設置することなく認証を行うことができるシステムである。分散IDの特徴は、その性質故に、特定の国や組織の干渉を受けないこと、またシステム全体に影響を与える深刻な不具合は発生しづらいということである。

分散IDに認証レベルを導入しておけば、本人確認をそれでやってから連動するサービスにログインできる。つまり、最高レベルの認証を行えば、マイナポータルにも入れるようにするのである。

分散IDへのログインは、まずアプリをインストールし、IDパスワードを設定する。これは第一段階である。次に、このIDに必要な認証レベルを割り付ける。これには生体認証を複数割り当てるのが良いと思われる。指紋と虹彩などが適当である。そして必要な認証レベルに達した他のIDと紐づければ良い。例えばマイナポータルと連携するには生体認証一つを必須とする。

こうすることで得られるベネフィットは、次のとおりである。

  1. 戸籍や国籍がない者、潜伏している犯罪者、住所不定者、その他国や自治体他あらゆる組織が把握できない人間に対し、その人が望む限りにおいて、IDを付与することができる。
  2. 国や組織の(恣意的な)意向によってIDを停止されたり、妨害など干渉されたりする恐れがない。
  3. 発行主体の倒産や国体の喪失等、地震等の自然災害、相当の大事件があっても、IDの運用には滞りがない。

また、分散ID固有のベネフィットではないが、

  1. あらゆるサービス向けIDと直接的なつながりがないため、ID連携に対する抵抗感が少ないと考えられ、ID纏めに有利である。
  2. 同じ理由により、ID連携への抵抗感が薄れる。これによって例えば複数の課金と複数の支払い手段の連携や、複数のSNSへの一斉投稿等といった、ID連携が実用的に行えるようになる。

というものがある。

このID連携は、従来考えるよりも遥かに広いものだ。例えば、AndroidとiPhoneとWindowsに同じIDでログインできる。これと連携してオンラインサービス全てとID連携すれば、つまりはローカルのマシンにログインできれば銀行にもマイナポータルにもログインできる。それもOSレベルで行われるので、IDマネージャーのようなものも必要ない。

この分散IDは、国も作ろうとしているのだが、これは民間がOSSとして作るべきであろうと思う。特定の国が作ってしまうと、海外の国がそれを使うのに抵抗を感じるだろうし、ライセンス等で抑えられてしまうのも良くないからだ。少なくとも規格はオープンにして、同じ規格に沿った複数の分散IDアプリは相互接続すべきである。

この分散ID自体は完全に匿名であるべきで、例えば氏名住所などとこのIDは直接連携してはならない。これをマイナンバーと連携することができたとしても、住所氏名等を保管するのはマイナンバー側である。マイナンバーから住所氏名を持ってきて銀行と連携させることは任意で可能であるにしても、それを強制すべきではない。

2024年9月23日月曜日

ポケット非常食


既存の非常食を備蓄しているが、大きくは3つ、不満がある。第一は、非常時には皿が洗えないが、それへの配慮がないものが多いこと。一方で容器を兼用するもの(カップ麺など)はかさばること。そして携帯が不便なことだ。

というわけで、こんなものを考えてみた。口の幅に合わせた35mmの幅を持つ吸口、その下に幅50mm、長さ120mm程度の保存部を持つレトルトパウチ構造である。これなら直接口に咥えて食べられるし、食べ終わったら小さく畳めるのでかさばらない。そして十分に小さいので、携帯することも苦にならない。大人でも子供でも食べやすい。

この構造なら、ゼリーやおかゆのようにそのまま食べられるものも、フリーズドライにしてお湯を注ぐものも、凍らせる前提のものも、ボイルするものも、タダの水も、スナック菓子も、好きに入れられる。小さい分、数と種類を多数取り揃えれば、飽きないし分配も楽になる。登山やキャンプの行動食にも、ランニングストックにも、子どものおやつにも、弁当代わりにも、対応できる。

従来の非常食の枠を超えて、広くラインナップを揃えて欲しい。普通のおかずも色々入れて欲しい。既に缶詰やレトルトになっている食品全てが対象になる。また、漬物や調味料など、あまり非常食の対象となっていなかったものにも目を向けて欲しい。栄養ドリンクや医薬品などでも検討してほしい。容量を少なく数を揃えるこの方式ならできるはずだ。

2024年9月20日金曜日

メタバース前提の家

 


生活の大部分がメタバース上でできるようになった時、家の構造はどう変わるのだろうかと考えてみた。

ここでの前提は、まず一人一台のXRゴーグルがあり、1日中装着しても苦にならないようになっていること、またあらゆることがメタバース上でできるようになっていること、とする。その上で、60平米3LDKに夫婦と子供二人が過ごしていたところがどう変わるのか、と考えてみる。

まず当然ながら、トイレ、風呂、飲食はメタバース上では不可能だ。このため、バスルーム、トイレ、冷蔵庫、食器、台所の類は変えられない。睡眠も同様で、寝落ちは可能でも寝具は必要だ。当然ながら冷暖房も必要である。

不要になるのは、テレビなどのAV機器、外出用の服やバッグ、アクセサリや化粧品類、文具、電話、などである。椅子とテーブルはかろうじて必要だろう。

ここから得られる結論としては、「2〜3LDK、風呂とトイレ以外の各部屋は小さくなる」と考えられる。つまり、個室は寝られるスペースさえあればよく、リビングも食事ができる広さがあれば十分だ、というものになる。60平米が45平米くらいになって、これが標準になるのではないだろうか。

生活体験はこのようなものになる。まず、朝起きるとXRゴーグルを装着する。これは大きなサングラスないしはスキーゴーグルのようなもので、十分に軽量であり、また天井からの無線給電によって使用時間制限がない。ゴーグルを装着したままリビングに向かう。AR(強化現実)によって、リビングは実際より広く、キレイに見える。

食事の準備もゴーグルを着けたまま行う。AIのアシストによって、より良い食事が作れる。食べるのもゴーグルを着けたままだ。実際の食事をARで強化し、より多く、美味しく食べることができる。

その後、大人は勤めに、子供は学校に行くが、ここから先はVRだ。そこで一通り仕事や学習をする。昼休みには、子供は友達同士で、親は一旦帰って、自宅の食事を摂る。午後も同様に仕事や学習を行い、子供はクラブ活動なども行うだろう。

この際、運動部は少々厄介である。この場合はXRゴーグルだけでなく、全身トラッカーと無限軌道などが必要になる。それにはカネが掛かる。それが調達できない子は、卓球のような狭いスペースでもできるスポーツにするか、文化部に行くしかないだろう。

飲み会などは宅飲みである。なので酒量は制限できるし、幾ら酔っても自宅なので問題ない。

休みのお出かけもメタバース内である。イベントに出かけるのも家族旅行も簡単だ。但し現地での買い食いや食事はできない。見るだけだ。ウインドショッピングはできるし通販も可能だが、現物を即時に入手することは当然できない。

さて、この方式では、外食の機会は殆ど無くなる。三食全て自宅である。そうなると、ネットスーパーの存在意義は大きくなるし、冷蔵庫も大きいものが必要になるだろう。

2024年9月19日木曜日

教育のメタバースへの移行

 


教科書の電子化とリモート授業の更にその先には、教育の仮想空間への移行を検討すべきである。というか、一足飛びにそこに行っても良いのではないかとすら思う。

リモート授業よりも、メタバース学校の方が遥かに理想的だと思う。というのは、リモート授業だとどうしても先生と生徒の対面のみになってしまい、生徒同士のインタラクションがないのに対し、メタバースならそれが可能だからだ。横を向けば、後ろを向けば同級生がいる。休憩時間もずっとメタバース空間で一緒にいられるから、校庭を走り回って遊ぶことも、おしゃべりをすることも、ちょっかいを出しては逃げ回ることも可能だ。遥かに本物の学校に近い。

もっと言えば、文化祭も体育祭も、リモート授業ではダメだがメタバースなら可能だ。HRもクラブ活動も校外学習も擬似留学も、リモートよりメタバース上の方が体感は良く、学習効果も高いだろう。

こうなれば、重いカバンを持って通学する時間も不要だし、インフルエンザが流行っていても休校になることはないし、障害者でもある程度一緒に学習できるし、過疎地域でも離島でも問題ない。地域をまたがって学習できるから、教師の不足にもある程度対応できるだろう。座学の一部にAI教師を使うことも考えられる。こう考えるとイイコト尽くめで、欠点が見当たらないと言っても良いほどだ。

ドワンゴのN高の授業を体験してみたことがあるが、なかなか良かった。小学生に5時間マスクを着けさせるのは厳しいだろうが、今後もVRゴーグルの進化は期待できるだろうから、諦めるのは早過ぎる。コンテンツを揃えて少しづつ移行することを検討すべきだろう。

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